教育振興基本計画21

皆さんこんにちは。

令和5年6月、新たな教育振興基本計画が閣議決定されました。

そもそも教育振興基本計画とは、「教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。」と説明にある通り、政府が教育をどのようにしていくか、という施策のもとになるものです。

特に行政職の皆様はしっかりコンセプトや計画を確認して、ご自分の自治体の施策にご活用いただければと思います。なぜなら、予算が通りやすいからです。自治体独自の施策を実施しようとしたときに、「教育振興基本計画のこの部分に則っています」という説明は大変有効ではないでしょうか。

本文のボリュームも多く、新しい言葉も次々出てきますが、ゆっくりご一緒に確認していきましょう。

Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策

(目標、基本施策及び指標)

目標4 グローバル社会における人材育成

グローバル社会、というのはいったいどういうことでしょう。

私は、仕事をする相手が、世界各国になる、という一面があると思います。

例えば、農業をするのなら、主に水の確保のため近隣住民とは良好な関係を保っておく必要がありましたが、1000㎞離れた相手とはよっぽどのことがない限り農業従事者本人が関係を築く、ということはなかったはずです。

商売するなら、遠くまで歩いたり馬に乗ったり、交通手段を使ったりして交易をするということは大事なことです。遠くまで行ければ行けるほど儲かる可能性は高まります。それだけお客様が増えますし、近隣のお客様が見たことない珍しいものが手に入ればより商売はしやすくなりますね。

工業製品は近隣の人にだけ売っていてはあっという間に飽和します。丈夫で長持ちするものは、いきわたってしまえばしばらく買い替えてもらえないわけですから。なので、遠くのお客様にまで遡及できる製品を作るととてもいいですね。

日本の中で、日本人だけを相手に仕事をすることは今の子供たちが大人になるころには減っていくのではないかと予想されます。子供の人口はどんどん減っていますからね。

となると、世界に目を向けて、世界を相手に仕事をする、ということがますます増えていくのだろうなと予想します。日本語で日本人の価値観に従ってのみ仕事をしていればいい時代は終わりを迎えつつある、と考えられますね。

とすると、大人になっていきなり世界の価値観と向き合うよりは、子どものころから世界は広くていろいろな人がいる、ということを知っておくのはとてもプラスになると思います。

私の子どもたちは、家から一番近い保育園に入ったら、なんと日本人が2人、残りの子供たちは全員外国籍、という保育園にあたりました。この環境は、子どもたちにとって「違う価値観で動いている人がいる」を自然に受け入れる経験になったと思います。

そういうわけで、計画にこの項目が掲載されているのは今後の子どもたちには必要だな、と私は強く思います。

具体的な施策は、以下の通りです。国際的な繋がりが必要であるとともに、在外教育施設における教育の振興も重要な内容です。日本人学校の先生をしていらした方にお話を聞くだに、とても苦労なさって教育の質を担保されているなと思います。

  • 日本人学生・生徒の海外留学の推進
  • 外国人留学生の受入れの推進
  • 高等学校・高等専門学校・大学等の国際化
  • 外国語教育の充実
  • 国際教育協力と日本型教育の海外展開
  • 在外教育施設における教育の振興
  • 芸術家等の文化芸術の担い手の育成

指標は以下の通りです。今までの指標とは違い、具体的な数値がかなり掲載されています。

  • 英語力について、中学校卒業段階で CEFR の A1レベル相当以上、高等学校卒業段階で CEFR の A2レベル相当以上を達成した中高生の割合の増加(5年後目標値:6割以上)
  • 全ての都道府県・政令指定都市において、中学校卒業段階で CEFR の A1レベル相当以上、高等学校卒業段階で CEFR の A2レベル相当以上を達成した中高生の割合を5年後までに5割以上にすることを目指す
  • 特にグローバルに活躍することが期待される層の拡充に向けて、高等学校卒業段階で CEFR の B1レベル相当以上を達成した高校生の割合の増加(5年後目標値:3割以上)
  • 2033 年までに、日本人高校生の海外留学生数について、12 万人を目指す
  • 2033 年までに、日本の高校への外国人留学生数について、2万人を目指す
  • 2033 年までに、日本人学生等の海外留学生数について、単位や学位の取得を目指す中長期留学者を中心に増加させながら、38 万人を目指す。このうち、長期留学者については 15 万人を目指す
  • 2033 年までに、日本の高等教育機関及び日本語教育機関への外国人留学生数 38 万人を目指していくとともに、卒業後の国内就職率(国内進学者を除く)6割を目指す
  • 海外に対する教育事業に参加した日本側の教職員・学生・児童・生徒の数の増加
  • 海外に対する教育事業に参加した相手国側の教職員・学生・児童・生徒の数の増加

来週は教育振興基本計画Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策の(目標、基本施策及び指標)の続きを読んでいきます。

投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。