【やさしく解説】教育DXロードマップの読み解き方
2025年6月、デジタル庁が「教育DXロードマップ」を公開しました。学校という環境や子どもたちの学びを、デジタル技術を活用してより良くするために何が必要かがまとめられている資料です。
このロードマップからは、先生や子どもたち、教育委員会の方々を取り巻く環境が今後どのように変わっていくのかを読み解くことができます。私たちハイパーブレインのような教育ICTのご支援をする民間企業にとっても、教育の未来を見据えたサポートをするために大切な資料です。
とはいえ、40ページ弱の資料すべてに目を通し理解するのは中々大変です。目次がないため、「何が書いてあるか」「どこに書いてあるか」がパッと見て分かりにくくなっています。
そこで今回は、この資料の「読み解き方」を易しく解説していきます!
教育DXロードマップとは何なのか
「教育DXロードマップ」は、教育においてDXを進めるために、どんな施策をどんなスケジュールで進めればよいのかを整理したものです。デジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省が連携して、3年前の2022年1月に公開された「教育データ利活用ロードマップ」を改訂する形で策定されました。
どんなことが書いてあるのか
施策とスケジュールが整理されている、と先述しましたが、もう少し詳しく確認しておきましょう。
本ロードマップでは、教育DXのミッション「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」を実現するために、今後3~5年間に必要な取組がまとめられています。前身の「教育データ利活用ロードマップ」による3年間の成果と課題や、生成AIなど新たな技術の進展を踏まえて、新たに取りまとめられました。
また、ロードマップ実現に向けて、各方面に対し次のように記述されています。みんなで協力して教育DXを実現させるための指針となるのものなのだということが分かります。
- 関係省庁:本ロードマップを踏まえ、社会や技術の進展に柔軟に対応しながら取組を進める
- 教育委員会・学校:標準規格に準拠したサービスを効果的に活用し、教育DXに向けた学習者のための積極的な取組を期待する
- 民間事業者:本ロードマップも参考にしながら、相互運用性を確保したサービス開発を期待する
- 教育分野の研究者:多様な教育データを活用し、より良い学びに向けた示唆が得られるような研究活動を期待する
では、37ページにわたる資料をどう読み進めていけばいいのかという話題に移りましょう。
資料構成
メインとなる部分と、参考にすべき部分を区別すると読みやすい
ロードマップ本編は全部で37ページあります。概要では10ページにまとめられていますが、しっかり読み解くためにはやはり、大元を読んだ方がニュアンスを理解しやすいでしょう。そのため、この記事では本編を紹介します。
ロードマップという単語の意味を調べると、「プロジェクトや目標達成までの道筋を時系列で示した計画表」です。これを想像して読むと、「時系列で示した計画表」が登場するのは、なんと13ページです。そのため、1ページ目から順番に気合いを入れて読むと、人によっては早々に「これは何の話をしているの……?」と感じるかもしれません。
もちろんどのページにも重要なことが書かれているのですが、「この資料のメイン=今後3~5年間の取組」と、「参考にすべきこと」を区別して読み進めると、構造を理解しやすいと思います。
目次を作ってみた
ざっくりとした区分けですが、各ページの内容を一覧にすると下記の表のようになります。最初から目を通すのは大変だ、という方はこの目次を参考に、気になるところから読むのもいいと思います。(ページ数:各スライド右下に記載の数字)
ページ | 内容 |
1-2 | ロードマップの趣旨、教育DXのビジョン |
3-5 | 教育を取り巻く背景、デジタル化の強み |
6 | デジタル社会の実現に向けての理念・原則 |
7-10 | 教育DXによって実現する将来イメージ |
11 | 今後3~5年でやるべき施策のイメージ図 |
12 | 各施策の目標 |
13 | 各施策の工程表(ロードマップ) |
14 | 教育DXが実現した際のシステム構造イメージ |
15-32 | 各施策の詳細 |
33-35 | 参考資料 |
1~10ページで、教育の現状や、教育DXによって実現する将来イメージを丁寧に説明しています。ロードマップの前提となる情報が集約されているページだと言えます。11ページには、今後3~5年で進めていく施策について図示されています。大きく5つの施策に分けられ、それぞれの詳細は15ページ以降に書かれています。そしてメインとなるロードマップ自体は13ページに記載されていますが、「各項目が何のために、何をゴールにしているのか」を理解するためには、他のページにも目を通す必要があります。
それでは、構造が分かったところで、内容についても簡単に確認しましょう。
教育DXが目指すのは「学ぶ人のために、あらゆるリソースを」

ロードマップに記載される施策が、教育DXとどんな関係にあるのかが11ページにまとめられています。
中央に「学ぶ人のために、あらゆるリソースを」とあります。これは、教育DXが目指すビジョンです(2ページに記載)。学ぶ人、つまりごく簡単に言うと子どもたちにリソースを充てるために、「デジタル化による教職員の負担軽減」「多様な学びのための学習環境の整備」「データによる学習者の自己理解・教師の見取りの充実」を進めるということが分かります。学ぶのは子どもに限ったことではないため、「生涯を通じて学びのデータを活かせる環境の整備」も進めることから、あえて学ぶ"人"をビジョンのターゲットにしているのですね。
教育DXロードマップは、あらゆるリソースが学ぶ人に向けられることを通じて「デジタルにより個別最適な学び・協働的な学びを一体的に充実」させることを目指している、ということがこの図から読み取れます。
では、具体的に何を行うのか?
12ページ以降に、各施策の目標や工程表、詳細が書かれています。5つに大別された施策をそれぞれ見ていきましょう。施策ごとに、1ページ目にビジョン、2ページ目以降に具体的な方向性が示されています。
デジタル化による教職員の負担軽減
教師が子どもに向き合える環境を整備し、「教師というリソース」を子どもに向けるための施策です。必要なすべての業務がデジタルで完結し、システムに一度入力すれば他システムにも連携される仕組みを確立させることなどを目指します。
「12のやめることリスト(デジタルに変えること)」が明示されました。長らく紙や電話で行うのが当たり前だったことを、デジタルに変えていこうというリストです。画像中にある通り、「教職員の負担を大幅に軽減し、学習者に向き合う時間を確保する」ことが校務DXの第一歩となります。「やめることリスト」や校務DXへの各自治体の取組状況は、校務DXダッシュボードにてモニタリングしていくとのことです。

多様な学びのための学習環境の整備
多様なツールで学べる環境を実現することで、「ツールというリソース」を子どもに向けるための施策です。学習者が従来の学習環境に加え、GIGA端末上で自分にとって最適な教材を使って学べる環境を整えることを目指します。
学習に生成AIを活用することで、個別最適な教材や情報と出会える可能性の向上が期待されています。なお、文科省が策定した「初等中等教育段階における生成AIの利活用におけるガイドライン」については、下の記事でご紹介しています。
文科省による生成AIガイドラインのポイント解説
個別最適な学習をサポートする生成AIサービス「AI+brain」(アイブレイン)
ハイパーブレインが提供する「AI+brain」(アイブレイン)は、生成AIリテラシーの育成に重点を置いた生成AIサービスです。学年・利用目的を選択し、チャットのように質問や相談を入力するだけで、最適な回答が得られます。学習者である子どもたちが、自分に合った学びを実現するために活用できるツールです。
ご興味のある方は右のリンクより製品ページをご覧いただけます。
データによる学習者の自己理解・教師の見取りの充実
「データというリソース」を使って、学習者の学びを支援するための施策です。システム・ツール間でデータを連携できるように教育データを標準化することなどを目指します。
あらゆる教育データをダッシュボード等によって可視化するためには、標準規格の策定やデータの標準化などが必要になります。
生涯を通じて学びのデータを活かせる環境の整備
幼稚園や保育園から社会人まで、「生涯にわたって多様なリソース」を学ぶ人に向けるための施策です。
手続きをデジタル化したり、転校・進学時の自治体・組織を越えたデータ連携(タテの連携)や分野を越えたデータ連携(ヨコの連携)を目指します。
教育政策や実践にも資する教育データの研究目的の利用
教育政策の改善や日々の教育実践への示唆につながるような研究を支える基盤として、研究機関等が匿名化された教育データにアクセスできるよう環境整備を進めることを目指します。
今後の動きに注目
教育DXロードマップが示す、今後の教育行政の展望をざっくりとお分かりいただけたかと思います。
今後は各省庁が状況の変化を踏まえつつ施策を着実に推進していくとのことです。本ブログ「教育、今どこ見る?」シリーズでも、各省庁の動きを追いつつトレンドをご紹介していくつもりです。「教育業界の新しいことを、簡単な言葉でお届けすること」を続けていきたいと思います。
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投稿者プロフィール

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株式会社ハイパーブレイン 教育DX推進部 広報室主任
教育情報化コーディネータ(ITCE)3級
元中学校理科教員。正社員として入社後、パートへの勤務変更、海外からのテレワーク、産休・育休取得を経て2024年にフルタイム正社員として復帰しました
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