ICT支援員に任せていいこと・いけないこと ― 「便利な人」で終わらせないための役割設計

はじめに

ICT支援員は、学校現場にとってとても心強い存在です。

  • ちょっとしたトラブルにすぐ対応してくれる
  • 操作に困ったときに助けてくれる
  • 授業での活用も一緒に考えてくれる

「いてくれて本当に助かる」「学校は電話をかける暇もない。そこにいる支援員さんに直接聞けるのはとても負担が少なくて済む」
そう感じている先生方も多いのではないでしょうか。

一方で、こんな声も聞こえてきます。

「面倒なICTのことは、とりあえず支援員さんに任せておけばいい」
「頼めば何でもやってくれるから、ついお願いしてしまう」

これらは悪いことではありません。信頼されている証拠ともいえるからです。

ただ、この状態が続くと、少しずつ違う姿になっていきます。学校も、支援員も、疲弊していくのです。

「ただ便利な人」になってしまうとき

ICT支援員が現場に入り、信頼を得るほど、

  • ちょっとした設定変更
  • 個別のトラブル対応
  • 印刷や資料作成の補助

といった依頼が増えていきます。特に3番目は、教材の作成をしたついでに、あまり操作のわかっていない教員の代わりに、資料作成の補助(と言いつつほとんど代行)や、印刷の設定がよくわからないから、と設定を確認したついでに印刷をするなどが行われがちです。

最初は小さなことでも、積み重なると、

  • 本来の業務に時間が使えない
  • 学校ごとに対応内容がばらつく
  • 改善や提案の時間がなくなる

という状態になります。

これは誰かが悪いわけではありません。

現場が忙しく、頼れる人がいるとお願いしてしまう。
とても自然な流れです。学校現場の忙しさは私たちが一番よくわかっています。殺気立つような忙しさではなく、自分の仕事を始めようとした途端、何かが割り込まれてくる忙しさですね。

ICT支援員の本来の役割とは何か

ここで一度、立ち戻りたいと思います。

ICT支援員の役割は何でしょうか。正確な定義、というのとは少し違うかもしれませんが、単なる「困ったときの対応」ではなく、

  • ICT活用を支える伴走者
  • 学校と教育委員会をつなぐ存在
  • 現場の課題を整理し、次につなげる役割

を持っているのが本来のICT支援員だと感じています。

つまり、「今の困りごとを解決する人」であると同時に、「次の仕組みを良くする人」でもある、ということですね。

任せていいこと

ICT支援員に積極的に任せていいことがあります。ここでは一般論としてお話ししますが、各自治体のご担当者様は今一度ご自身の自治体の仕様書を見直されてはいかがでしょうか。(もちろん、契約が最優先です。契約で定められた仕事がICT支援員の仕事です)

・現場に寄り添った支援

  • 授業でのICT活用の提案
  • 教員への操作支援
  • 活用の伴走支援

・課題の整理と共有

  • 支援員に対する質問内容の分析
  • 学校ごとの課題の可視化
  • 教育委員会へのフィードバック

・研修や仕組みづくりへの関与

  • 研修内容の提案
  • FAQの整備
  • ナレッジの蓄積

こうした役割は、現場に行き、直接現場の「困った」を解決しているICT支援員だからこそできる部分です。

任せきらないほうがいいこと

一方で、任せきらないほうがいい領域もあります。一般論として申し上げます。(これも契約次第です)

・意思決定

  • どのシステムを採用するか
  • どの運用ルールにするか
  • どこまでを優先するか

これらは、自治体の方針に関わる部分です。最終的な判断は、教育委員会が担う必要があります。支援員は、提案する人です。決める人ではありません。

・属人的な個別対応の積み重ね

  • 特定の学校だけの特別対応
  • 個人に依存した設定や運用
  • 記録に残らない対応

これが増えると、仕組みとして残らなくなります。DXを推進するために一番整理が必要な部分は「どれだけ例外処理をせずに済むか」です。
また、報告書を提出し終わった後の依頼など、支援員が記録できない状態での対応は、次同じことが起こってもまた一からやり直しになります。

・「担当が特に定まっていない面倒な仕事はとりあえず全部お願いする」状態

ICTに関することをすべて任せてしまうと、

  • 教育委員会の設計力が弱まる
  • 学校側の理解が進まない
  • 支援員の負荷が過剰になる

結果として、持続しない体制になります。それは、せっかくお金をかけて導入した仕組みを完全に無駄にしていることになってしまいます。

大切なのは「役割を分ける」ことではなく「つなぐ」こと

ここまで「任せていいこと・いけないこと」と書いてきましたが、実際には線引きはそれほど単純ではありません。すべての物事が白黒はっきりつくならいいですが、そうではないです。どの程度柔軟な対応をするかについては、事前に管理者とICT支援員が合意しておく必要があります。

そして、それ以上に重要なのは、

  • 誰が何を決めるのか
  • 誰がどこまで担うのか
  • どう連携するのか

を、関係者で共有することです。関係者、というのは、教育委員会の職員、特に仕様書を書いた人、学校代表の教員、ICT支援員代表、ICT支援員管理者等のことです。

ICT支援員を「外にある存在」としてではなく、同じチームの一員として位置づけることが大切です。

おわりに

ICT支援員は、「ただ便利な人」では終わりません。

現場と制度をつなぎ、教育の情報化を前に進める重要な存在です。

その力を最大限に活かすためには、

  • 任せること
  • 任せきらないこと
  • 一緒に考えること

このバランスが必要です。支援員が来たから、面倒なあの作業を全部任せよう、というのは違うということです。
ブログなので柔らかく書いていますが、「全部任せよう」という状態が続くと、支援員側も戸惑いが大きくなります。
十分な情報が共有されないまま依頼が重なってしまうと、「どこまで対応すべきか」の判断が難しくなってしまうのです。

その結果、「できません」と言わざるを得ない場面が増え、「使いにくい支援員だな」と感じられてしまうこともあるかもしれません。

そうした背景も含めてご理解いただけると、よりよい関係が築けるのではないかと思います。

🌱 読者への問い

あなたの自治体では、
ICT支援員の役割はどのように定義されていますか?

適切に「任せること」「任せきらないこと」「一緒に考えること」を定義し、より良い状態を作り出しませんか。

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投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの常務取締役です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。