必要なネットワーク速度はR7末までに100%確保される!? 学校ネットワークの実態と課題
先月、「令和6年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」の速報値が公開されました。
これは毎年、文科省が学校におけるICT環境の整備状況や、教員のICT活用指導力を毎年調査しているもので、おおむね夏頃に速報値、秋頃に確定値が公開されます。
今回は、この結果を足掛かりに「学校のネットワーク環境」の現状をご紹介します。
- 1. 令和7年3月時点でのインターネット接続状況
- 1.1. 接続方法と契約方法
- 1.2. 接続回線速度(帯域)別
- 1.3. ポイント:この調査結果は各校の契約内容(理論値)に基づく
- 2. 令和6年4月に示された「当面の推奨帯域」
- 2.1. 学校規模ごとの帯域の目安「当面の推奨帯域」
- 2.2. 当面の推奨帯域を満たす学校数は、たった2割程度
- 2.3. 目標は、令和7年度中に必要なネットワーク速度を確保済みの学校を100%にすること
- 2.4. ポイント:当面の推奨帯域は実測値で満たす必要がある
- 3. 令和7年2月実施 自治体ピッチ
- 3.1. 事業者から、学校規模の目安や参考価格が示された
- 3.2. 「振り返り座談会」で、文科省とデジタル庁の思いが分かる
- 3.2.1. 現状、学校がかける通信費は一般家庭と同程度
- 4. 令和7年6月に示された「ネットワークアセスメント実施状況」
- 4.1. 令和8年度以降もネットワークアセスメント実施予定がない自治体が約2割
- 4.2. 学校のネットワーク改善ガイドブック
- 4.2.1. セルフチェックするならガイドブックを参照
- 4.2.2. 事業者に依頼するなら文科省の補助対象
- 5. 最後に:GIGAスクール構想は、一人一台端末とネットワーク環境で成り立つ
- 5.1. 端末更新や運用サポートはお任せください
- 6. 参考文献
令和7年3月時点でのインターネット接続状況
冒頭で触れた「令和6年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」の速報値では、令和7年3月時点での結果が公表されています。その中でも学校のネットワーク環境に関する部分を見てみましょう。
接続方法と契約方法
左の円グラフは、インターネットへの接続状況を示しています。簡単に言うと、固定系通信は無線LAN、移動系通信はLTE等を指しています。90%以上の学校が無線LANを使用していることが分かります。
右の円グラフは、インターネットの契約について示しています。ベストエフォート型とは、「契約した速度を出せるのは最高の条件下の時=混んでいると遅くなる」方式です。一方ギャランティ型とは、「契約した速度を常に利用できる」方式で、速度が保証されている分、ベストエフォート型よりも高価です。グラフを見ると、多くの学校が安価なベストエフォート型を選択していることが分かります。
接続回線速度(帯域)別
こちらのグラフは、各契約方法の契約速度の割合を示しています。契約方法に関わらず、大部分の学校が1Gbps以上であることが分かります。
では、「1Gbpsもあれば大丈夫、学校のネットワーク環境は既に十分整っている!」と捉えて問題ないのでしょうか。
ポイント:この調査結果は各校の契約内容(理論値)に基づく
答えは、「分かりません」。
なぜなら、学校によって規模がバラバラだからです。1Gbps・ベストエフォート型という同じ条件を選んでいる学校の中にも、児童生徒数が100人の学校もあれば、1000人の学校もあるでしょう。ベストエフォート型では、同時に接続する人数が増えるほど速度は低下します。単純計算すると、利用人数が10倍になれば速度は1/10になるということです。
つまり、この調査では学校規模ごとの契約内容が示されていないので、どれだけの学校がネットワークをサクサク利用できる状態にあるのかを読み取ることはできません。
令和6年4月に示された「当面の推奨帯域」
では、学校のネットワーク環境が整っているのか否かは、どのように判断すればよいのでしょうか。これは、文科省の「学校のネットワーク環境整備」というページで昨年4月に公表された「(参考資料)学校のネットワークの現状について」(PDF)にて、目指すべき「当面の推奨帯域」が示されています。
学校規模ごとの帯域の目安「当面の推奨帯域」

当面の推奨帯域とは、同時に全クラスで、ネットワークの支障なく端末を活用できる水準です。端末活用の日常化に向けて、全学校が目指すべき水準とされています。
当面の推奨帯域を満たすかの判断は、「契約時の速度」ではなく、「実際に測定した速度」で行います。
当面の推奨帯域を満たす学校数は、たった2割程度
令和5年11月の調査では、当面の推奨帯域を満たす学校はたったの2割程度であることが判明しました。この水準を下回っていても授業が全く成り立たない、という訳ではありませんが、基準を満たすのは2割程度だったということです。
目標は、令和7年度中に必要なネットワーク速度を確保済みの学校を100%にすること
当面の推奨帯域が示されたのと同時期である令和6年4月、文科省は「教育DXに係る当面のKPI」を公表しました。ここには、「必要なネットワーク速度確保済みの学校:100%(R7)」とあります。

令和5年11月時点で約20%だったものを、令和8年3月までに100%にする、という方針です。「これはまずい、なんとかせねば」という危機感が表れている気がしますね。
ところで、「必要なネットワーク速度」というのは、当面の推奨帯域を確保することはもちろん、「ユーザ体感調査」によるネットワークの課題の有無を 把握することも重要だとされています。*
ポイント:当面の推奨帯域は実測値で満たす必要がある
先ほども書いた通り、当面の推奨帯域を満たすかどうかは「実際に測定した速度」で判断します。表で示される推奨帯域(速度)の値でベストエフォート型契約を結ぶと、スペックが足りない可能性もあります。ギャランティ型なら速度的な心配は少ないですが、その分費用面の負担が大きくなってしまいます。
では、どのようなプランを選べばいいのでしょうか。指導主事の先生が「よし、契約を見直そう」と思ったとして、自治体内の各校の規模に適したプランを一つ一つ調べる必要がある……と想像するだけで、筆者は頭が痛くなります。
令和7年2月実施 自治体ピッチ
そんな課題に対応すべく、今年2月に「学校ネットワーク自治体ピッチ」が開催されました。
事業者から、学校規模の目安や参考価格が示された
自治体ピッチでは通信事業者等が参加し、全国の地方公共団体・教育委員会に対して、サービスのプレゼンテーションが行われました。事業者から学校規模の目安と参考価格が提示され、指導主事の先生にとっては「この規模ならこのプラン」と選択しやすい状況になりました。教育DXサービスカタログを見れば、事業者の比較も簡単に行えます。
「振り返り座談会」で、文科省とデジタル庁の思いが分かる
この自治体ピッチの振り返り動画が公開されているのですが、これは非常におススメです。GIGAスクール構想の背景から、ネットワーク環境の整備について国がどう考えているのかまで、とても分かりやすい言葉選びで説明されています。教育情報化コーディネータ(ITCE)検定試験やICT支援員能力認定試験の受験を考えている方にとっても勉強になる動画だと思います。
せっかくなので、この振り返り動画の中で筆者が衝撃を受けたことをご紹介します。
現状、学校がかける通信費は一般家庭と同程度
現状の学校における月々の通信費は、たったの1万数千円程度なのだそうです。家庭がスマホやWi-Fiにかけるランニングコストとほぼ同程度だと紹介されていました。
学校の通信費が低いのは、予算を確保できないことが原因であることが多いと思われます。それを考慮して、文科省は「必要なネットワークを確保するための契約に必要な費用」を地方財政措置として確保しています。*
令和7年6月に示された「ネットワークアセスメント実施状況」
さて、ネットワーク環境を整備するためには、「今どんな課題があるか、その原因は何なのか」を探ったうえで改善に取り組むことが重要です。その調査をすることをネットワークアセスメントと呼びます。
昨年末~今年頭にかけて実施された調査結果が「学校のネットワークアセスメント実施状況について」(PDF)にて公表されています。
令和8年度以降もネットワークアセスメント実施予定がない自治体が約2割

そこで明らかになったのは、「これまでにネットワークアセスメントを実施しておらず、令和8年度以降も実施の予定がない」設置者(自治体)が18.7%あるということです。ただしその内の半数は、既に十分なネットワーク環境が確保されている、あるいは今後ネットワークの改修計画等があるとのことです。
つまり、約1割が他の理由でネットワークアセスメント実施予定がないということになります。公表されている具体的な理由には以下のようなものがあります。
- 統廃合や適正配置計画があるため
- すでにネットワーク機器を入れ替え中であるため
- 予算確保が困難なため
- 当面の推奨帯域は満たしていないが支障が生じていないため
「当面の推奨帯域は満たしていないが支障が生じていない」と感じているのは誰なのか、気になるところです。先述の通り、当面の推奨帯域を満たさなくとも授業が全く成り立たないわけではありません。現状は支障を感じるほど日常的ICT機器の活用が進んでいない可能性があります。活用とネットワーク環境の両方に対し、改善が必要な自治体なのかもしれません。
学校のネットワーク改善ガイドブック
これからネットワークを改善しようとする学校のために、文科省は「GIGAスクール構想の実現 学校のネットワーク改善ガイドブック(令和7年6月改定) 」(PDF)でネットワークアセスメントのポイントを紹介しています。
セルフチェックするならガイドブックを参照
ガイドブックには、チェックリストが掲載されています。ネットワークアセスメントを教育委員会で実施する場合に参考にできます。考えられる不具合の原因や対応例が紹介されているので、対応策の検討に役立ちそうです。
事業者に依頼するなら文科省の補助対象
専門知識を有する事業者等にアセスメントを依頼するには当然費用がかかりますが、その場合、文科省の補助対象になります。また、アセスメントの結果、改善が必要と判明した部分に対する費用も補助対象になります。文科省は予算の確保が難しい自治体のことも奥底しているのですね。
最後に:GIGAスクール構想は、一人一台端末とネットワーク環境で成り立つ
今回は、学校のネットワーク環境の現状をご紹介しました。
GIGAスクール構想といえば「一人一台端末」というイメージが強いですが、一人一台端末の活用を支えるネットワーク環境の整備も、GIGAスクール構想を支える柱の一つです。GIGAスクール構想第二期(セカンドGIGA)真っただ中の今、二大柱である「一人一台端末の着実な更新」と「ネットワーク速度の確保」が各学校で進められているのです。
端末更新や運用サポートはお任せください
ハイパーブレインは、25年以上教育ICT支援一筋の会社として、GIGAスクール構想以前から学校への端末導入や更新に携わっています。また、コンサルティングからヘルプデスク・ICT支援員、ICT環境の構築まで、教育の情報化に関するあらゆるサポートを行っています。
学校や自治体のICT環境・または運用面でお困りのことがございましたら、まずはお気軽にお話だけでもお伺いさせてください。自治体の「育成されたい子どもたちの姿」をお伺いしつつ、最適なご支援をさせていただきます。
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参考文献
*:(別添資料1)令和7年度以降の学校におけるICT環境の整備方針 (PDF)
投稿者プロフィール

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株式会社ハイパーブレイン 総務部広報課 主任
教育情報化コーディネータ(ITCE)3級
元中学校理科教員。正社員として入社後、パートへの勤務変更、海外からのテレワーク、産休・育休取得を経て2024年にフルタイム正社員として復帰しました
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