校務DXは誰のためにあるのか
校務DXという言葉が、あらゆる自治体で聞かれるようになりました。
ただ、その実態をたどると、「教員の働き方改革」や「ペーパーレス化」といった部分的な効率化にとどまっている例も少なくありません。
校務DXの本質は、業務の「電子化」でも「システム導入」でもない。教育のために校務そのものを再設計することです。
本稿では「次世代校務DXガイドブック」と実例を手がかりに、現場起点でDXを進める視点を整理します。
校務DX=システム導入「ではない」
DXという言葉が広がる一方で、「新しいシステムを導入することがDX」という誤解が広がっています。
誤解、というと少しニュアンスが違うかもしれませんね。DXしなきゃいけないけれどなんだかよくわからないからとにかく何かしなければならないからシステムをいれよう、ということになっているのかもしれません。
ですが、DXとはデジタル化(Digitization)でもデジタライゼーション(Digitalization)でもないのです。アナログを単純にデジタル化するだけでもなく、システムを導入するだけでもない、「デジタルを前提に業務そのものを再設計すること」が本質です。
たとえば、
- 紙の申請を電子化するだけなら「デジタル化」
- 同じフローを電子フォームに置き換えるだけなら「デジタライゼーション」
- 申請の必要性や承認プロセスを根本的に見直すのが「DX」
自治体・教育委員会でも、仕組みそのものを変えることができるのか、ということが問われています。
校務が効率化されることがゴールなのか
校務DXの目的は「時間をつくること」ではなく、その時間で「教育の質を上げること」。
校務が効率化されたから、教員が教育活動に専念できる時間を生み出された、(から、子どもたちが楽しく学べる)という状態を作ることが必要ですね。
一方、現場では新システムで二重入力や運用負担が生じ、時間が埋まるケースも。フローの再設計なしに導入だけ進めると逆効果になり得ます。学校現場ではこれまでのほとんどがこういうことの繰り返しで、「ICT機器やシステムを導入すること」が「煩雑なことが増える」と思っている先生方もいらっしゃいます。
システムを導入することで一部は効率化されても、運用負担や二重入力が残る状態であるなら本末転倒です。
真の校務DXとは、業務の最初から最後と、その業務に関わる他の業務範囲までまるごと「仕組みを変える」こと。
教員・事務職・管理職が「何を、どう判断し、どんな成果を共有したいのか」を対話し、業務を洗い出し、必要な業務かどうか仕分け、そして業務そのものを組み替えるプロセスが不可欠です。
誰のためのDXか ― 「現場」「管理」「社会」それぞれの視点
そう考えると、ではどのような視点を起点に考えていけばいいのか、ということに目が向きます。例として3点考えてみます。もちろん、学校最大のステークホルダー子どもたちや保護者、上記の事務職など、いろんな視点を考えるきっかけにしてみてください。
(1)現場の先生のために
- 少なくとも成績処理・出欠席情報など、真に教師の時間を取り戻すために、「成績処理だけ」「出欠席だけ」ではなくそれらがシームレスに連携し、職員室だけでなく教室でも入力・確認できる仕組み
- システムが「入力先」という認識から「気づきをくれる相棒」になること(そのために、ダッシュボード機能やAIアシスタント機能が開発されています)
(2)教育委員会・管理職のために
- 学校現場のデータを「報告」として捉えるだけでなく「活用」に変える(そのために、ダッシュボード機能が開発されています。特に自治体単位でのダッシュボードは教育委員会の政策決定プロセスを大きく変えます)
- データから課題を見つけ、支援策を設計し、仕組み化してDXを実行すること。実行したままにしないで、振り返り改善することまでやり切ること
(3)社会のために
- 保護者・地域・民間との情報共有・協働の基盤を定め、高度なセキュリティと必要な情報共有を両立させること
- 教育行政の透明性・説明責任を支えるためにデータを活用し、実行されたDXを広め、改善すること
つまり、 校務DXとは、単に業務を効率化するためではなく、教育を社会とつなぐための基盤づくりでもあるといえます。これからの社会は、「つながること」がとても大事です。いつまでも「縦割り」「分断」のままでは生きづらいのではないでしょうか。
現場を支える人のDX ― 「支援の仕組み」を変える
校務DXを進める中で、考えておく必要があるのが「支える人のDX」です。
ICT支援員、ヘルプデスク、システム管理者などのDXを支える裏方の仕組みがアナログなままでは、現場は持続できません。特にシステム管理者への申請が「紙でハンコを押す」運用のままのことをお聞きします。
校務DXは支援の仕組みも同時にDXしなければ持続しません。問い合わせ・申請・設定変更が紙や口頭依頼のままでは、現場のボトルネックは解消しないからです。
業務と業務が分断され、そこの接続をどうする? となった時、一番手っ取り早い解決は「人が何とかする」です。紙とハンコは長年様々な効力を発揮してきましたから、目の前の問題を片付ける際に咄嗟にその手段を取ってしまうこともあります。そうならないために、「自分のところのDX」だけではなく、「全体のDX」を考える必要があり、そこでの大きなポイントが、「先生以外の専門業務の人、支える人との接続」だというわけですね。
たとえば、問い合わせ対応の履歴をナレッジ化することは大切です。ヘルプデスクの問合せをナレッジ化するのは勿論、司書が受けた問い合わせもナレッジ化すれば活用できます。ハイパーブレインのd+tas(データス)はお問合せを確認・共有するために便利なツールです。アカウント数も制限なく1校ずつのライセンスですので、お役にたてます。
校務支援システムなどの操作支援をチャットボット化することも先生方の利便性を高めます。ハイパーブレインではEQ.bot(エクボ)を提供し、QAガイドラインをもとに問合せ履歴からQAを作成しています。今必要なQAは何か、足りないものは何かなど、クエリ分析等を通して導入してくださったお客様と伴走することで、本当に現場が必要なチャットボットになるよう努めています。
また、先生方にどのようにシステムの操作方法を伝えるかや、FAQを自動更新する仕組みづくりも大切です。今でもまだFAQ作成には人の目が必要ですが、昔よりずいぶんそれは減ってきました。現場にいる担当者がより「全体像」を考える時間ができ、「この部分がボトルネック」「こういう風にしたらいいのでは」とアイディアを出すことができます。
「現場を支えている人」が気付いたアイディアや知見を集めて、導入後も全体最適化を図っていきたいですね。
自治体が今すぐ取り組める3つのアクション
校務DXを進めるために今すぐ取り組めるアクションは以下の通りです。
1️⃣ 校務の棚卸しから:観察ベースで「誰が・何に・どれだけ時間」を可視化
※大阪市の資料が参考になります。ヒアリングでは可視化できず、観察の結果可視化されたということがよくわかります。

出典:文科省 2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会(第2回)資料3 大阪市教育委員会発表資料 (PDF:1916KB) 2P(2025年11月27日閲覧)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1369517.htm
2️⃣ 「つながる前提」で再設計:校務支援×人事×eポータルの連携要件を先に決める
※特に、校務支援システムと学習eポータルの連携は、必ず検討しておいた方がいいです。
3️⃣ 支援体制もDX:ヘルプデスク/支援員/校務担当らがデータで連携する土台を
※支援も「勘と経験」から「根拠と仕組み」へ。そのために高度なセキュリティは必要ですし、支える人達への教育も必要です。
おわりに ― 校務DXのゴールは「教育の質」
校務DXの目的は、業務の削減・効率化ではなく、教育の質を上げることです。
教員が子どもと向き合う時間を増やし、判断や支援にデータを活かすことで、子どもたちが楽しく学べる環境を作る。
それこそが、DXの本当の意味です。(データを活かすのであって、データの言いなりになるという意味ではないことは何度でも申し上げます)
効率化も重要ですが、その次にある「再設計」は、「全体を見据えて」考えていく必要があります。
私たちハイパーブレインは、現場と行政の間でその再設計を支え、「誰一人取り残さないDX」を実現していきます。
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投稿者プロフィール

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株式会社ハイパーブレインの常務取締役です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。
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