そのICT支援員、来年度替われば解決しますか?― 自治体担当者が抱え込まないために、事業者に聞いておきたい2つのこと

はじめに

学校から、教育委員会にこんな連絡が来ることがありませんか。

「ICT支援員によって、言うことが違うんです」
「今来ている支援員さん、ちょっと困るんですよね」

ご担当者としては

  • 事業者に伝える。
  • 事情を確認してもらう。
  • 必要なら、支援員本人にも指導してもらう。

と事業者にお願いするのが筋です。ただ、それでも改善しない、そんなことが続くと、決して口には出さなくとも

「今年度だけ我慢すれば……」

と思うこともあるかもしれません。

実際、そのICT支援員本人に原因があるなら、人が替われば解決することもあります。
ただ、一つだけ気をつけたいことがあります。

人を替えても、同じ問題が起きるケースです。

その場合、問題は「その人」ではなく、ICT支援を支える「仕組み」にあるのかもしれません。

ICT支援員の支援品質を考える、というと大変なことのように聞こえることもあるでしょう。
でも、自治体のご担当者にすべてを見ていただきたいわけではありません。
次の定例会で、二つだけ確認してみてください。
「相談」と「共有」です。

  • 分からないことがあったとき、支援員は誰に相談するのか。
  • 一人の支援員が得た知識を、他の支援員にどう共有するのか。

この2つを見ると、支援員が一人で抱え込む運用になっていないか、支援が個人の経験だけに頼っていないかが見えてきます。

「人の問題」と「仕組みの問題」は分けて考える

例えば、特定のICT支援員について、

「学校での態度に問題がある」
「何度指導しても改善しない」

ということであれば、その支援員本人の問題かもしれません。そこは、事業者が対応するべき仕事です。

一方で、

「支援員によって回答が違う」
「前の支援員はやってくれたのに、今の支援員はやってくれない」
「学校によって対応が違う」
「分からないことを、支援員がそれぞれの判断で答えている」

といったことが起きているなら、少し話が違います。

業務範囲が支援員に共有されていないのかもしれません。

判断に迷ったときの相談先が決まっていないのかもしれません。

ある支援員が知っていることを、他の支援員が知らないのかもしれません。

だとすると、一人を交代させても同じことが起きます。

ここで一度見てみたいのは

「誰が悪いのか」ではなく、「人が替わっても同じことが起きないか」です。

人の問題なら、人を替えることで解決できます。
仕組みの問題なら、人を替えても繰り返します。

ICT支援員を管理するのではなく、ICT支援という事業を見る

ここで、「そんなところまで見なければいけないのか」と思われたかもしれません。

その必要はありません。

ICT支援員を業務委託しているのであれば、採用や勤務管理、人材育成、日常的な指導などは、基本的に事業者が責任を持って行う部分です。ほとんどの仕様書がそのようになっているはずです。
一人ひとりのICT支援員の力量を細く全部把握すること。
困っているICT支援員の相談に、一件ずつ丁寧に対応すること。
これらは事業者の役割です。

自治体の担当者として重視しなければならないのは

事業者側に、支援員を支える仕組みがあるか、ということです。

そのために事業者に確認してほしいのが、「相談」と「共有」の2つです。

  • 分からないことがあったとき、支援員は誰に相談するのか。
  • 一人の支援員が得た知識を、他の支援員にどう共有するのか。

この2つを見ると、支援員が一人で抱え込む運用になっていないか、支援が個人の経験だけに頼っていないかが見えてきます。

1つ目は「相談」― 分からないとき、誰に聞くのか

まず、こんな問いを一つ投げてみるだけでも、見えてくることがあります。

「ICT支援員が学校で分からないことに出会ったとき、誰に確認することになっていますか?」

ICT支援員が、学校で聞かれたことをすべて知っている必要はありません。
ICT機器もクラウドサービスも学校の運用も、すべて一人で把握するのは現実的ではありません。
大事なのは、

分からないときに、どこへつなぐことになっているか。

です。

例えば、
「管理者に確認します」
「ヘルプデスクに問い合わせます」
「内容によって教育委員会やベンダーに確認します」
という答えが返ってくるかもしれません。

それなら、少なくとも「分からないことを一人で抱え込まない」流れがあります。

一方で、
「ベテランの○○さんに聞いています」
という答えだったら、もう一つ聞いてみます。

「その方がお休みのときは、どうするんですか?」

そこで別の相談先が出てくるならよいでしょう。

でも、「そのときは……どうしているんでしょうね」「○○さんが出勤するまで回答を待ってもらっています」

となるなら、その仕組みは一人のベテランに依存している可能性があります。

もしそうであれば、
「○○さんがお休みのときはどうするのでしょうか」
と、もう一歩確認してみてもよいかもしれません。どう解決するかを考えるのは、まず事業者の仕事です。

2つ目は「共有」― 分かったことを、どう残すのか

もう一つ確認したいのが、「共有」です。

事業者にこう聞いてみます。

「ある支援員が学校で解決したことは、他の支援員にどう共有されていますか?」

ある学校で、「この設定だとうまく動かない」というトラブルが起きたとします。

支援員が調べて、解決しました。
翌週、別の学校で同じことが起きました。
担当する支援員が違えば、また一から調べる。
その次の学校でも、また一から調べる。

これでは、支援員が何人いても、それぞれが個人戦をしている状態です。

逆に、一人が見つけた解決方法が共有されていれば、次の支援員はそこから始められます。

ここでも、立派なシステムが必要なわけではありません。
事業者から、
「定例のミーティングで共有しています」
という答えが返ってきたら、

「その情報は、後から見られるようにどこかに残していますか?」

と聞いてみてください。

「チャットで共有しています」

なら、

「後から入った支援員も、その情報を確認できますか?」

と聞いてみてください。

自治体の担当者として見るポイントは一つです。

その人がいなくなっても、知識が残るか。

そこが確認できれば、少なくとも特定の支援員の経験だけに頼る状態からは一歩離れています。

「良い支援員をお願いします」だけでは、実は不安定

もちろん、経験豊富で対応力の高いICT支援員を配置してもらえるに越したことはありません。
ただ、人である以上、経験や得意不得意には差があります。
そして、異動や退職もあります。

だから、

「良い人を配置してもらう」だけで支援品質を維持しようとすると、その人がいなくなったときに困ります。

「○○さんがいるから大丈夫」ではなく、
「○○さんがいなくても、困ったときに相談できる」
「○○さんが知っていることを、他の支援員も使える」

という状態になっているか。

つまり、

「相談」と「共有」が、特定の人に依存せず回っているか。

ここを見ると、ICT支援が「人」で回っているのか、「仕組み」で支えられているのかが見えてきます。

担当が替わっても、支援は続く

今自治体でICT支援員を担当していても、それはずっと続く仕事ではないでしょう。来年度には、別の担当になるかもしれません。

だから、ICT支援についてあらゆることに何でも詳しくなる必要はありません。

ただ、担当している間に、

学校から苦情が来る。

事業者に確認する。

支援員を替えてもらう。

また別の学校から同じような苦情が来る。

そのたびに事情を聞いて、事業者と調整する。

もしこのようなことが繰り返されているなら、一度「人」ではなく「仕組み」を見てみる価値があります。

見るのは、ここまでお伝えしてきた2つです。

  • 「相談」――支援員が分からないとき、誰に聞くことになっているか。
  • 「共有」――一人が分かったことを、他の支援員にどう残しているか。

答えがはっきりしていれば、支援員を支える仕組みがあることが分かります。

答えがはっきりしなければ、それも一つの発見です。

自治体だけでその仕組みを作る必要はありません。
まず、今どうなっているのかを知る。
そして必要なことを、事業者と一緒に考える。

担当者が替わっても、支援員が替わっても、学校への支援は続きます。
だからこそ、「誰が担当しているか」だけでなく、「人が替わっても回る仕組みになっているか」を見てみる。

それが、ICT支援員という「人」ではなく、ICT支援という「事業」を見ることなのだと思います。

投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの常務取締役です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。