次世代校務DXガイドブック6
皆さんこんにちは。
2025年3月(令和7年3月)に 次世代校務DXガイドブック-都道府県域内全体で取組を進めるために- が公開されました。
サブタイトルにある通り、「都道府県域内全体」での取組が重要である、という認識のもと「学校、首長部局、関連事業者等の幅広い関係者との共通認識を図る」ために使える資料です。行政職の皆様におかれましては、「どうして話が通じないんだ」と困られることもあるでしょう。それを手助けしてくれる資料となりますので、ご一緒に確認していきましょう。
2.次世代校務 DX を実現するために必要な取組
2-2.環境整備を伴う校務 DX の実施
我が家の猫の額ほどの庭には、どれだけ生命力が強いんだ、というくらい雑草が生えます。猫の額なので、ずっと手で抜いていたのですが、時間がかかるわ、くたびれるわ、誰も手伝ってくれないわ(子どもたちに一袋千円でアルバイトを持ちかけても断られるレベル)である日思い立って電動草刈り機を買いました。するとなんということでしょう! 今まで2時間かかって猫の額の「ひ」ぐらいしか草抜きできなかった庭が、2時間できれいになったのです。
人力でもなんとかなることを、機械の力やシステム、仕組みの力でより効率的に実施できる、というのはどのような事例でも見られます。
ですので、このガイドブックでも、今まで見てきた「すぐできる」ことをすぐ実行すること以外に、の「次世代校務 DX 環境」の整備が必要 だと述べています。先生がちょっと頑張ったらできるだろ! ということは既に限界が来ていると何度も申し上げました。機械の力を借りて、仕組みやシステムを作って、人間は楽にいきましょうよ。修行しているわけではなく、仕事しているのですから、楽できる部分は楽するべきだと私は考えます。
それでは、このガイドブックで示されている「次世代校務 DX 環境の整備の要素」は以下の通りです。
- 強固なアクセス制御による対策の実施
- ネットワーク統合
- クラウド型校務支援システムの整備
- データの可視化・利活用を行うための機能の整備
見出しはよく聞くものばかりです。そして、担当になった時に「だからそれはどういうこと???」となる項目ですね。
1の強固なアクセス制御については、「多要素認証」による利用者認証はまだ想像ができます。ログイン画面でパスワードを入力するだけではなく、顔認証など生体認証と組み合わせる、ということなどですね。ただ、その多要素認証を使った利用者認証、端末認証、端末・サーバ・通信の監視や制御等を組み合わせたセキュリティ対策のことをいう、なんですが、どういう通信の監視や制御を組み合わせるのが「強固なアクセス制御」なのかわからない、という方も多いでしょう。
これが唯一絶対の正解!! というものは世の中になかなか存在しませんが、奈良県の事例などは参考になります。ご確認ください。
2のネットワーク統合、は、1が実現したうえで、「学校内外どこからでも教職員用の端末から校務系システム ・学習系システムいずれにもアクセスできるような環境を構成すること」とあります。教職員が使う端末を持ち歩いて、家からでも学校からでも、データにアクセスできる、ということですね。
学校には校務系(成績や出欠席など機微情報含む)と学習系(通常インターネットに接続でき、小テストの結果や子どもたちの作品含む)があります。校務系に誤って児童生徒が接続しないように、高いレベルで校務系は隔離されてきた歴史があります。先生方はご自身で自覚せずとも、「面倒くさい操作」をしなければ校務系と学習系の間でデータを受け渡しするのが大変、という状況でセキュリティが守られてきた背景があります。
ですが、それは校務、教務の円滑な遂行を妨げ、せっかくデータを取っても活用できないなど様々なハードルとなってしまっています。
それを、スムーズに使えるようにしましょう(ただし強固なアクセス制御は必要)といっています。
3で述べられているのは、「外部システムからのデータ連携」ができるように、接続ポイントを共通で利用できる、マルチテナント構成のクラウド型校務支援システムを整備するということです。
データ連携ってどういうこと? と思われる方もいらっしゃると思います。今までの多くの校務支援システムには校務支援システムのIDパスワードが存在し、違うシステムにはそのIDパスワードが存在し……という状況でした。外部と連携するための仕組みをシステムに組み込まないと「1度ログインしたら校務支援システムにもログインできます!」は実現できないのです。他にも、「小テストの点数を参考に成績つけたいから、ドリルシステムの小テストの点数と連携しよう」というようなことなどが想定できます。
あっちでもこっちでも同じデータを入力する必要がない、というのがデータ連携の醍醐味です。そのような校務支援システムを選びましょう、ということですね。
4はひとことで言えば「ダッシュボード」です。「教育データを統合して可視化し、児童生徒に対するきめ細かい指導・支援、効果的な学級・学校経営、教育委員会による学校支援等に利活用することを可能とする機能を整備」ということは、あちこちにバラバラと存在していたデータを一か所にまとめることで、なんらかの傾向や対策が見られるようになることを期待する、ということです。
出欠席のデータと、ドリルの結果データを組み合わせてみると、難しい単元が浮かび上がったということや、どういう出欠席状態なら元気いっぱい活動できるのかということなど、今まで「ベテラン教員の勘」で気づいていたようなことを機械やシステムの力を借りて気付くことができるようになる、ということです。
そして、
「次世代校務 DX の効果を最大限に享受するため、都道府県教育委員会の主導の下で、関連システムを共同調達・共同利用しながら、都道府県域内一体となって取組を実施することが重要」
であるとガイドブックは述べています。
環境整備は都道府県単位で、という強いメッセージが込められています。これは、異動後に○○システム×N個を一から全部覚えなおし……というのを避けることや、スケールメリットによる価格を抑えられることや、指導主事がいない、あるいは一人で何でもする、というような小規模自治体の環境整備の遅れを何とかできる、など、利点が多くあります。
都道府県単位でまとめる人がとてもとてもとてもとても大変だ、ということは重々承知の上ですが、でも、都道府県単位の整備を進めるために、ハイパーブレインも全力でご支援していきます。
投稿者プロフィール

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株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。
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