次世代校務DXガイドブック5
皆さんこんにちは。
2025年3月(令和7年3月)に 次世代校務DXガイドブック-都道府県域内全体で取組を進めるために- が公開されました。
サブタイトルにある通り、「都道府県域内全体」での取組が重要である、という認識のもと「学校、首長部局、関連事業者等の幅広い関係者との共通認識を図る」ために使える資料です。行政職の皆様におかれましては、「どうして話が通じないんだ」と困られることもあるでしょう。それを手助けしてくれる資料となりますので、ご一緒に確認していきましょう。
2.次世代校務 DX を実現するために必要な取組
2-1.今の環境でできる校務 DX の実施
昨今話題の生成AIに関する箇所です。「なんか情報が洩れそうで怖い」「創造性が奪われそう」「文章は(絵は)(動画は)(プレゼンは)自分で作ってこそ」「人間の考える力がなくなる」などなど、心配や不安の種は尽きません。
このガイドブックではどういう取り扱いなのか見ていきましょう。
(3)生成 AI の利活用
「校務において生成 AI を積極的に利活用することは有用」と考えられるとあります。
その理由として、
- 民間企業においても業務の効率化・高度化の観点で積極的に活用されている。
- 教職員自身が生成 AI の利活用を通じて新たな技術に慣れ親しみ、事実と異なることをもっともらしく回答する「ハルシネーション」や大量のデータに潜む偏見や差別等の「バイアス」の存在といった生成 AIの性質を踏まえた上で、その利便性や賢い付き合い方を知っておくことは、児童生徒の学びをより高度化する
が挙げられています。
民間企業でたくさん使われている、が説得力があるのかな、というのは疑問ですが(役所で使ってる、の方が先生方には響くかも?)先生ご自身が使ってみて「こういうものだ」と理解するのは大事なことだと思います。
まず、文章の素案やたたき台を作ってもらい、それを検討してみるところから始めるというのが生成AIに触れる第一歩だという方も多いでしょう。文章は検討しやすいので、たくさんやってみるといいと思います。案を出してもらって手直しして、更にそれをもとに案を出してもらって手直しして……ということを繰り返していくうちに、そういうことか、というのがお分かりになるのではないでしょうか。
生成AIが作成してそのまま、という文章は、最近ちょっと怪しさが匂う、という人が増えてきたのではないかと思います。
Google検索が台頭してきたときによくあった「なんでもググればいいのだから覚える必要がない」「人間の記憶力、さらには創造性が奪われる」という言説や、「Google検索して一番上にあったから情報を信用する」について「とんでもないことだ!」という状況に至るまで、生成AIも似たような経緯をたどっているな、と思います。「生成AIがこう言ってるからこの方法が正しい!」「いやいや、検証が必要でしょう」と多くの人が感じるようになっており、そこに至るまでの時間がとても短くなっているな、と感じます。
だからといって、では、学校に全部任せます! というのも乱暴な話です。ガイドラインでは
各教育委員会が主導して生成AI の適切な利活用を推進する環境を整備する必要
があると述べています。制度設計や利活用の方向性を示すことができるのは教育委員会だからであり、保護者の立場としては、自治体内で考え方を統一しておいてもらえたほうがありがたい、というのはあります。道路を挟んで学区の違うA中学校ではガンガン生成AIが使われ、自分の子どもたちが通うB中学校では絶対禁止、とされている……では、困ってしまいますね。
リーディングDXのサイトなどで紹介されている事例として、
- 「授業で使用したワークシートや生徒の振り返りの文言などをまとめて生成 AI に読み込ませ、テスト問題の素案を作成した
- 過去の学校 HP の掲載記事を参照させ、学校行事に関する HP 掲載文や報告記事のたたき台を作成した。その結果、業務負担の軽減につながった
が挙げられています。これは想像しやすい取り組みですね。
ガイドラインはさらに踏み込んで、「適切なセキュリティを確保し、データベースの整備も含め重要性の高い情報を取り扱える環境(以下、「セキュアな環境」という。)を構築した上で生成 AI を利活用することも有用」と述べています。
- 不登校児童生徒の関係者の支援や気づきのデータを基にして、今後の支援方針案や短期計画、長期計画のたたき台を示すことで、ケース会議等で役立つようになった
という事例が既にある、と紹介されています。
コロナ禍の時に、不登校支援の相談員の方から「Zoomは、絶対に機密情報が漏れないといえるだろうか」と相談を受けました。それまで電話や対面でやり取りしていた相談について、オンラインで実施するかどうかを検討しているということでした。私は「絶対に漏れないということはない。絶対はお約束できない」と回答しました。世の中のどのようなものもそうだと思います。絶対に盗聴されない電話や絶対に誤送信されないFAXがあり得ないのと同じ理由です。
ですので、「セキュアな環境とかいったって信用ならない」と思われる方がいらっしゃることも十分わかりますが、すべてを環境や機械、システムに押し付けるのではなく、最後のセキュリティの砦は使い手である、ということも理解したうえで、活用していくことが大事なのではないかと感じます。(もちろん、過度に使い手に頼るセキュリティがダメなことは大前提の上です)
この、セキュアな環境については令和6年度「次世代の校務デジタル化推進実証事業(生成 AI の校務での活用に関する実証研究)」で実証研究がなされており、成果物の発表がとても待ち遠しいものになっています。
また、「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン」には、場面・主体に応じた留意事項がまとまっているので、ぜひ参照するように、とあります。これはぜひ読んでもらいたいガイドラインです。ハイパーブレインでも深井が取り上げて書いてくれています。
来週は、具体的な取り組み内容の続きを見ていきます。
投稿者プロフィール

-
株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。
最新の投稿
HBI通信2025年6月16日次世代校務DXガイドブック8
HBI通信2025年6月9日次世代校務DXガイドブック7
HBI通信2025年6月2日次世代校務DXガイドブック6
HBI通信2025年5月26日次世代校務DXガイドブック5