教育振興基本計画9
皆さんこんにちは。
令和5年6月、新たな教育振興基本計画が閣議決定されました。
そもそも教育振興基本計画とは、「教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。」と説明にある通り、政府が教育をどのようにしていくか、という施策のもとになるものです。
特に行政職の皆様はしっかりコンセプトや計画を確認して、ご自分の自治体の施策にご活用いただければと思います。なぜなら、予算が通りやすいからです。自治体独自の施策を実施しようとしたときに、「教育振興基本計画のこの部分に則っています」という説明は大変有効ではないでしょうか。
本文のボリュームも多く、新しい言葉も次々出てきますが、ゆっくりご一緒に確認していきましょう。
Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針
③地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進
(社会教育を通じた持続的な地域コミュニティの基盤形成)
計画では「社会教育は、地域住民が共に学ぶもの」と定義しています。よく言われていることですが、学校で学んだことを地域や家庭に活かす、ということが大切ですね。そのためには、地域のことをよく知ることが大事です。
「防災、福祉、産業振興、文化交流など、広義のまちづくり・地域づくりに関する多様な行政分野において、その地域課題の解決に向けて、関係省庁が地域コミュニティに関する政策を提示している」とあります。文部科学省だけではなく、様々な省庁が地域との連携が必要だと言っているということですね。防災の例を一つ考えてみても、学校は避難所になり得る可能性が高いのですから、地域と密接に関係を作っておくと、災害時に先生が小間使いのように走り回る必要はなくなるでしょう。
ただ、平時に関係を保つには、学校にも地域にも双方努力が必要です。計画では「地域と学校をつなぐ地域学校協働活動推進員等のコーディネーターの育成とともに、前述したコミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進など、社会教育の充実による地域の教育力の向上や地域コミュニティの基盤強化を図ること」とあります。
どのようなことも、「先生がちょっと頑張れ」ではない、片手間ではない力の入れ具合が必要だということが述べられていますね。それを実現するためには財源が必要になります。計画に書かれているのですから、財政支出、手当、補助金等の情報をアンテナ高くキャッチしたいです。
(公民館等の社会教育施設の機能強化、社会教育人材の養成と活躍機会の拡充)
公民館、図書館、は、多くの自治体に存在する社会的施設ですね。それを地域が必要とする形で運営していこう、ということが計画に書かれています。また、その際には「貧困の状態にある子供、外国人、障害者やその家族、社会的に孤立しがちな若者や高齢者など、困難な立場に置かれている人々の社会的包摂の観点からの対応」も必要だと書かれています。
社会的に困難な状況にある人の声は、頑張って集めないと集まりません。「自分は大変です!!!!」と発信する余裕すらない、発信していいことを知らない、発信すると心身の安全が損なわれる等配慮が大いに必要です。どの課題ももちろんそうですが、特にこの社会的困難な状態にある人たちに対する対応は、絶対に片手間ではできませんし、専門的な知識を持った人が対応する方が理にかなっています。
計画では「都道府県・市町村における社会教育主事の配置促進や社会教育士の活躍機会の拡充に向けた取組を推進することが必要」とあります。福祉や行政と連絡を取り合い、より良い学びを多くの国民が享受できるようになるといいですね。
(生涯学習社会の実現、障害者の生涯学習の推進)
日本人ほど、一度職についてしまえば勉強をしない人たちはいない、というようなことを耳にされた方もいらっしゃるでしょう。生涯学び続けること、それが仕事に直結する・しないに関わらず、自分を豊かにするために学び続けること、ということについて意識がさほど高くないということは確かにそうだな、という風に思います。
そこにさらに、学ぶ上で工夫や配慮が必要な障害者が、気軽に学べる状況が整っているかと聞かれれば、おそらくそうではない、という答えが返ってくるのではないでしょうか。
生涯学び続けることのできる環境を、より多くの人に提供することができるように、と計画では述べられています。
学校が直接担うものではないものも含まれているので、計画の記載も割とあっさりしている③地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進ですが、どれもこれも、「片手間」ではできない仕事ですね。専門的な知見を持った人が活躍できるような立場と待遇が必要だと感じます。
来週は教育振興基本計画の続き、④教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を読んでいきます。
投稿者プロフィール
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株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。
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