デジタル学習基盤を読む―「そろえた先」に、自治体は何を設計するのか

「デジタル学習基盤整備計画」をきちんと策定している自治体が増えてきました。何をどのように整備するのか、多くの人に伝わるように計画されています。とてもいい傾向です。では、整備されたあと、どのような子どもをどのように育てる教育をしていくのか、ということについて、以下に考えるヒントを挙げました。

ご自分の自治体で、子育てしたい人を増やすためには、その世代に何を訴え、どう刺さる設計をする必要があるのか、という観点が必要だと思います。

はじめに ― デジタル学習基盤は「物」ではなく「構造」

「デジタル学習基盤」整備計画を策定している自治体や、これから策定しようとしている自治体のご担当者の方も多くいらっしゃることだと思います。
一方で、現場でこの言葉がどう解釈されているか、先生方とお話しして感じるのは、

  • 1人1台端末
  • ネットワーク
  • クラウドサービス

といったハードやシステムの一覧として受け取られているのでは、と思うことがあります。

ですが、本来「基盤」とは、単なる設備の集合ではありません。
人が入れ替わっても、環境が変わっても、学びが回り続ける「仕組み
それがデジタル学習基盤の本質です。

GIGAスクール構想第2期、校務DX、校務支援システム統合、支援人材の育成――
これらをバラバラに考えず、一つの軸で捉えるために、
今回は「デジタル学習基盤」という言葉を、あらためて読み解いてみたいと思います。

文部科学省が示す「デジタル学習基盤」とは何か

文部科学省の各種資料を読むと、「デジタル学習基盤」は次のような要素を含んで語られています。

  • 端末・ネットワークといった環境整備
  • クラウドを前提とした学習・校務
  • アカウント・データの一体的な管理
  • 活用を支える支援体制
  • セキュリティと利便性の両立

注目すべき点は、単に「そろえること」ではなく、「使い続けること」「改善し続けること」が前提になっている点です。

つまり文部科学省は、
「整備された状態」のことではなく
「運用され、次につながっていく状態」を基盤と呼んでいる、
と読むことができます。

デジタル学習基盤は「3層」で考えると見えやすい

デジタル学習基盤を整理する際、私はよく「3層構造」で考えます。

第1層:技術基盤(スタートライン)

  • 1人1台端末
  • 安定したネットワーク
  • クラウド環境

これは必要条件であり、ここがなければ何も始まりません
衣食足りて礼節を知る、の衣食の部分だと感じます。ですので、ここだけ整備が済んだ、という状態では「デジタル学習基盤ができた」と言いづらいのではないかと思います。これは見出しにある通り、スタートラインに立てる準備ができました、というものだといえるでしょう。

第2層:運用基盤(自治体の力量が出る)

  • ID・アカウント管理
  • セキュリティポリシー
  • 校務と学習の接続
  • 異動・更新時の引き継ぎ

ここが整っていないと、
「担当者が変わった途端にわからなくなる」
「学校ごとに運用がバラバラになる」
といった状態が起こります。

特に、ID・アカウント管理を学校が実施している、というのはとても大変な状況です。自治体全体の管理ができないからです。自治体が管理していたとしても、アプリケーション個別のIDは学校で、なども今後はSSOに統一していくべきだと考えます。あまり「べき」という言葉は使わないよう意識していますが、これだけはいえます。ID・アカウント管理は、自治体が踏ん張って管理し、SSOに統一すべき最優先のものだと私は認識しています。

第3層:人的基盤(最も差がつく)

  • ICT支援員・ヘルプデスク
  • 校務DX担当
  • 教育委員会内の設計・判断力
  • 支援人材の育成と継続性

実は、この第3層が最も重要です。運用を円滑に進めるのは人だからです。仕組みがどれだけ立派であっても、それを守らせる人、守らない人に対して守るメリットを説き、守るように促す人、仕組みをわからない人に説明できる人、わからない人からの質問に答える人、これらの人がいてこそ仕組みはきちんと動きます。

チャットボットやAIで答えが出るようなことは、おそらく現場でも既にわかっているようなことは多いのです。「Aの場合はBだとわかっているがA’の場合にBと考えていいのかどうか」というようなことが現場では頻繁に出てきますね。

その時に、どこに聞けばわかるのか、ということがスムーズな自治体は先生方の時間の貯金を増やしています。

一元的なヘルプデスクが切り分けてくれる、(ネットワークはAヘルプデスク、GIGA端末はBヘルプデスク、校務パソコンはCヘルプデスク、というような自治体の事情はわかりますが、現場はとても大変です。大変なのです)現場に直接訪問してくれるICT支援員とその一元的なヘルプデスクが一体となって支援している自治体は、とても運用がスムーズです。

「基盤がある自治体」と「あるだけの自治体」の違い

これまでのHBI通信で取り上げてきたテーマは、すべてこの違いに行き着きます。

  • TALISの結果で見える教員のICT活用
  • ICT支援員の配置密度と役割の明確さ
  • 校務DXで業務が再設計されているかどうか

これらがうまく機能している自治体には、共通点があります。

  • 人が異動しても説明できる
  • 支援が属人化していない
  • 次の改善に進むための材料が残っている

これは偶然ではありません。
デジタル学習基盤が「構造」として設計されているかどうかの差です。

構造を支える、第3層の「一元的なヘルプデスク」に投資をするのが、最も効果的だと現場を見ていて感じます。

自治体が今、点検しておきたい5つの問い

ここで、ぜひ一度立ち止まって考えていただきたい問いがあります。

  1. この基盤は「誰が」説明できますか?
  2. 担当者が替わっても、同じ運用ができますか?
  3. 活用が進まなかったとき、立ち戻る場所はありますか?
  4. 支援人材は、この基盤の中で明確な役割を持っていますか?
  5. 次の更新・調達で「何を変えるか」を言語化できますか?

一つでも詰まる問いがあれば、それは「整備されたが、まだ基盤にはなりきっていない」状態かもしれません。

おわりに ― デジタル学習基盤は「未来への引き継ぎ装置」

デジタル学習基盤は、
今の子どもたちや先生、職員、保護者はもちろん、

  • 次の子どもたち、保護者のため
  • 次の先生、担当者のため
  • 未来の自治体のため

学びを引き継ぎ、改善を積み重ねていくための装置です。

だからこそ、端末やネットワークだけでなく、運用、支援、人材育成まで含めて考える必要があります。

デジタル学習基盤をどう設計するか。
それは、自治体が「教育をどう支え続けるか」という意思表示そのものです。

ハイパーブレインは、現場・行政・支援人材をつなぎながら、
この基盤を「使われ続ける仕組み」として育てる伴走を続けてまいります。特に、一元的なヘルプデスクがICT支援員と一体となってご支援する体制を作ることが得意です。
ハイパーブレインは、その仕組みづくりから伴走し、ともに「未来をつくる人材」を育ててまいります。少しでもご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの常務取締役です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。