2024~2025年 教育関連の調査・報告等まとめ(前編)

みなさんこんにちは。深井です。
「教育、今どこ見る?」シリーズ、連載第2回です。この「教育、今どこ見る?」シリーズでは教育分野の最新情報を紹介していく予定です。

最新情報と言いつつ、初回は昨年12月の文科省生成AIガイドラインについてご紹介しました。では今回は、今月公開されたばかりの最新資料の解説を……!
と言いたいところですが、第2回~第4回はこの一年間の教育関連分野の振り返りをさせていただきます。

なぜなら、“ホットトピックを知るなら、土台となる知識も必要だと考えているから”です。故きを温ねて新しきを知る、といったところでしょうか。ただ、歴史は突き詰めればどこまでも遡れるので、ここでは一年分だけ振り返ることにします。

ボリュームが大きいので、前・中・後編の3回に分けてお届けします。

6月のITCE3級、ICT支援員認定試験を受験予定の方にとっては、時事問題の参考になるかもしれません。目次から気になる項目を選んでお読みいただくのもいいと思います。

一年分をどうやって振り返るか

では、まずは一年分の出来事をどのように抽出するかをご説明します。

注目トピックが蓄積されているハイパーブレインのXを活用

ハイパーブレインは、X(旧Twitter)で教育の最新トピックを毎日投稿しています。それも何年も前からです。投稿内容の厳選は、教育情報化コーディネータ(ITCE)1級保持者である大江が行っています。
つまり当社のXは、教育情報化の専門家が「これは知っておいた方がいい」と感じる、注目トピックの詰め合わせだと言っても過言ではありません。(ド直球の宣伝)

さて、この「教育、今どこ見る?」シリーズは大江が連載する「HBI通信」とXの間のポジションを目指しています。つまり、Xの140字制限では伝えきれない部分をカバーするブログだということです。

そんなわけで、過去一年の振り返りもXを補足する形で行います。
過去ポストから「調査」「報告」等のキーワードでピックアップしたものを、元ポストを添えつつ簡単にご紹介していこうと思います。

中央教育審議会関連

まずは、中央教育審議会(中教審)に関するものをご紹介します。

中央教育審議とは、文部科学大臣の諮問に応じて、教育に関する重要なことを話し合い、意見や提案をするための国の会議です。例えば、「これからの学校教育をどう変えるか」や「新しい学習指導要領をどう作るか」など、大きなテーマについて専門家や実際の先生たちが集まり、様々な立場から意見を出し合います。出された提案(答申)は、実際の教育制度や学習指導要領にも影響します。つまり、中央教育審議会は「日本の教育の未来を話し合う場」といえる存在です。

「諮問」「答申」という専門用語を確認しておきましょう。中教審における諮問とは、文部科学大臣が、教育等に関する重要な事項について、中教審に意見や提言を求めることを指します。中教審は、この諮問に応じ、調査・審議を行い、結果を文部科学大臣に答申として提出します。

令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のため環境整備に関する総合的な方策について(答申)

昨年8月、上記見出しの答申が取りまとめられました。この答申では、教師を取り巻く環境整備の目的を次のように示しています。

今般の教師を取り巻く環境整備の最終的な目的は、学校教育の質の向上を通した、「全ての子供たちへのよりよい教育の実現」である。

その上で、「学校における働き方改革の更なる加速化」「教師の処遇改善」「学校の指導・運営体制の充実」の必要性を説いています。

右の元ポストでは、答申を踏まえて、「ただちに各教育委員会と学校等が取り組むことができ、かつ改めて徹底が必要な方策について整理したから徹底してね」という通知文を紹介しています。その中で校務DXの加速について指摘されているということです。

校務DXについては、今年3月に「次世代校務DXガイドブック -都道府県域内全体で取組を進めるために-」が公表され、HBI通信でも、先週からこの資料の解説をスタートしていますので是非お読みください。

初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)

右の元ポストで紹介されている配布資料は、昨年12月の諮問に関するものです。

その一つが、学習指導要領の改訂に向けた検討についてです。こちらは、「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」のページに、とても分かりやすくまとめられたポイント資料があります。

学習指導要領は約10年ごとに改訂されますが、この諮問をきっかけに次の改訂に向けた議論が始まっています。

多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について(諮問)

同ポストで紹介されているもう一つの重要な資料は、教職員の質向上についてのものです。
多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について(諮問)」のページに同じ資料が掲載されています。

「教職課程の在り方」「採用・研修の在り方」等が今後議論されていくことになります。

児童生徒の学習等に関する調査

続いては、児童生徒を対象に実施された調査についてご紹介します。

令和6年度全国学力・学習状況調査の報告書・集計結果

令和6年度の結果

全国学力・学習状況調査とは、文部科学省が実施する調査で、「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」こと等を目的としています。
コロナ禍を除いて毎年実施されています。

質問調査の結果では、「主体的・対話的で深い学び」に取り組んだと考える児童生徒ほど、各教科の正答率や挑戦心・自己有用感・幸福感等が高く、自分で学び方を考え工夫していることなどが示されています。

令和7年度の実施について

今年度の実施要領が公開されています。昨年度との違いは以下のようになっています。

  • 経年変化分析調査及び保護者に対する調査は実施しない
  • 中学校理科に関する調査をCBTで実施する
  • 中学校理科の調査結果はIRTスコアを利用する
  • 引き続き、障害のある児童生徒や日本語指導が必要な児童生徒に対する配慮を可能とする
  • 中学校理科、児童生徒質問調査(CBT実施)は、後日実施なら学校外での実施を可能とする

OECD生徒の学習到達度調査2022年調査(PISA2022)のポイント

PISA2022のポイント

PISAとは、OECDが進めている国際的な学習到達度に関する調査のことです。2022年の調査結果が2023年12月にOECDから公表され、日本版は2024年に入ってから公表されました。

元ポストのリンクでは、日本は数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3分野すべてにおいてトップレベルだったこと等、PISA2022のポイントが示されています。

PISA2025パンフレット

PISA調査はおおむね3年ごとに実施されています。つまり、今年本調査が実施される予定で、「OECD生徒の学習到達度調査2025年調査 パンフレット 」が公開されていますので、少しだけご紹介します。

科学的コンピテンシー、読解力、数学的リテラシーの主要3分野と、革新分野(ラーニング・イン・デジタルワールド:LDW)に関する学習到達度テストが実施されます。主要3分野の中では、科学的コンピテンシーが重点的に調査されます。

また、今回からオンラインでのCBT調査となります。

IEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)

TIMSSとは、IEA(国際教育到達度評価学会)が進めている算数・数学及び理科の到達度に関する国際的な調査のことです。

2023年調査の結果では、平均得点は⼩・中学⽣いずれも、算数・数学、理科ともに、引き続き⾼い⽔準を維持しています。

学校・教育委員会・教員に関する調査

義務教育に関する意識に係る調査

調査目的を「義務教育における課題を把握し、中央教育審議会等における議論や今後の政策立案に当たっての参考とすること」として、令和4年度に実施された調査です。教師、児童生徒、Webモニターへの調査結果をまとめています。

調査から分かることとして

  • 公立学校が特に果たすべき役割として「基礎的・基本的な知識・技能を定着させること」が重視されている。児童生徒も「学校生活を通じて基礎的・基本的な知識・技能を身につけたい」という回答が最も多い。
  • 児童生徒の約6割が学校での学習量や授業時間を「ちょうどよい」と感じる一方、教師の約5割が「多すぎる」「やや多い」と感じている。

等がありますが、元ポストにもあるように「1人1台端末(タブレットなど)を活用する力(1人1台端末(タブレットなど)を学習等で活用する力)」を身につけておくべき・身につけたいという回答は三者ともに最下位でした。

端末が文房具のような学習手段の一つとして捉えられているからこそ、端末操作自体に注目するのではなく、その先の能力を身につけることが重視されている、ということだと良いなと思います。

令和6年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果

元ポストは令和5年度の調査結果を紹介していますが、令和6年度分も既に公表されています。

新たに「時間外在校等時間」が調査され、令和5年度の1年間を通じた教諭の時間外在校等時間は下記のようになっています。

  • 小学校:約75%
  • 中学校:約58%
  • 高等学校:約72%
  • 特別支援学校:約92%

また、「学校・教師が担う業務に係る3分類」に係る取り組み状況は順調な一方自治体による差があるとされています。ただ、特に「登下校時の対応」、「授業準備」、「学校評価や成績処理」は、昨年度から全体で5ポイント以上向上しています。

学校基本調査-令和6年度 結果の概要-

教育機関の在学者数や教員数が毎年調査されています。

小学生が前年度より10万8千人減少しています。特別支援学校へ進学する子どもが増えていますが、それにしても減少幅が大きいことなどが分かります。

女性管理職の割合については、元ポストで触れている通りです。

令和6年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査の結果

学校で行われる授業には、「標準授業時数」が決められています。これは、学習指導要領の内容を指導するのにどれだけの時間が必要か、などを考慮して国が定めているものです。

例えば、中学校1年生理科の標準授業時数は年間105コマです。学校が35週間あるとすると、週3コマずつ授業をすれば達成できます。ですので、中1の子どもが4月に配られる時間割表では、理科が3コマ割り当てられていることが多いかと思います。

各教科等の年間の標準授業時数の合計は1,015コマです。調査では、これを大幅に上回る学校などを調査しています。

最後に

今回は、2024年~現在の教育関連のトピックから、中央教育審議会に関するもの、児童生徒の学習等に関する調査、学校・教育委員会・教員に関する調査をご紹介しました。

サクッと振り返れる記事にしようと思っていたのですが、結果としてなかなか濃密になってしまいました。
文科省のサイトはサイレント更新が多いという話をしばしば聞きますが、きちんと通知されている情報の一部をまとめただけでも大ボリュームになりましたね。

次回は振り返りの中編として、ネットワークに関する調査などをまとめてご紹介します。

投稿者プロフィール

深井明理
深井明理
株式会社ハイパーブレイン 教育DX推進部所属
元中学校教員
正社員として入社後、パートへの勤務変更、海外からのテレワーク、産休・育休取得を経てフルタイム正社員として復帰しました