ICT支援員配置データから見える自治体格差

全国の学校にICT支援員(のような人)を配置する取り組みは、20世紀からありました。そして、ハイパーブレインはまさにそのために生まれた会社です。

平成25年の「第2期教育振興基本計画」で「ICT支援員の配置」について言及があり、「そのために地方財政措置をします」となったのが平成26年の「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画です。そして、「4校に1人」というKPIは平成30年の「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」で設定されました。
文部科学省は現在も「4校に1人程度の配置」を目標として掲げていますが、実際には自治体ごとに大きな差があります。(令和5年度 ICT支援員(情報通信技術支援員)の配置状況 によると、佐賀県は221%の配置に対して、「約3割の自治体は配置していない」とあります。)

この記事では、文部科学省が公表した「教育の情報化の実態調査」や地方財政措置資料などをもとに、ICT支援員の配置実態とその背景を読み解き、自治体がより良い教育を実現できる次のアクションを考えます。

ICT支援員とは何をする人か

ICT支援員は、学校現場における「教育の情報化」を支える専門職です。
学校に訪問し、先生方の伴走支援を実施します。主な業務は、機器の操作支援・トラブル対応にとどまらず、授業でのICT活用提案、校務支援システムの定着、セキュリティ意識の向上支援など多岐にわたる、ということはこれまでもHBI通信で繰り返しお話ししてきました。(以前のものを読んでいなくても分かるように何度でも書きます)

GIGAスクール構想以降、1人1台端末やクラウドサービスの導入が進むなかで、ICT支援員の存在は「現場の安定稼働」を支える不可欠なインフラといえるようになりました。

「4校に1人」のKPIの現実

文部科学省は、平成30年から「4校に1人程度のICT支援員配置」をKPIとして示しています。
しかし、この数字には大きな曖昧さがあります。なぜなら、「1人が4校を担当」といっても、その訪問頻度や滞在時間は自治体ごとにまったく異なるからです。

例えば、全部で4校の自治体があったとします。そこには、ヘルプデスクとICT支援員を兼任している人がいて、各校に3か月に1回、2時間程度訪問する支援を行っている、とします。
この状態でも「4校に1人」ICT支援員が存在していますから、この自治体はKPIを達成しているのです。

これで、学校に十分な支援が届いているとはとてもいえない、ということはご想像に難くないと思います。

自治体によってここまで違う:配置格差の実態

ICT支援員の配置率は、全国平均では向上していますが、自治体間の差は依然として極めて大きいのが実情です。

令和3年度の「自治体における学校のICT関係決算状況等調査」の結果は、自治体毎に公表されていました。(今は文部科学省のWebサイトからは削除されています。私はダウンロードして手元に持っていますので、それをもとにお話しします)

「ICT支援員0人」が707自治体ある一方、県立小中学校2校に対し、7人配置されている宮崎県が全国トップの充実となっています。続いて7校に対して18人の葛城市、また、20校以上の自治体では73校に73人配置している葛飾区なども充実した配置といえるでしょう。

この格差については次のような要因が考えられます。

  • 地方財政措置を教育委員会にきちんと適用する力:地方財政措置は自治体の裁量で用途を考えることができます。一般的に教育委員会は「学校からきて2,3年で学校に戻る」指導主事が予算を担当することも多く、どうすれば地方財政措置を予算化できるか、というノウハウが蓄積されにくい構造があります。
  • 人材確保の難しさ:ICT支援員の成り手不足ももちろんですが、そのICT支援員を上手に運用できる人材の確保も大変難しい状態です。業務委託先のICT支援員リーダーや管理者、教育委員会内のICT支援員担当者の確保、その仕事内容等格差が大きな状態です。

配置の「量」も「質」も問われる時代へ

ICT活用が進んでいる学校の先生にお伺いすると、「ICT支援員は1週間に2回くらい終日滞在してもらえるとようやく頼みたいことが頼めると思うんだけどなあ」というお言葉をいただきます。常駐ICT支援員はまだまだ少なく、3か月に1回訪問の自治体もまだまだたくさんあります。物理的にご支援できる時間を増やす必要がある、ということはもちろんですが、これからは「どんな支援をしてほしいのか」の設計が重要です。
端末更新後の設定、クラウド移行、セキュリティポリシー対応、教員研修の支援、アカウントの処理、端末管理……
どれも高度な知識と現場調整力が必要であり、かつ、明確に仕事として定義する必要があるものばかりです。「現場が大変でとにかく人手不足。ICTに関すること何でも支援して! とりあえず現場に行って現場のニーズにこたえて」というスタンスでは、ICT支援員の真の力を発揮するのは難しいでしょう。

「わが自治体は、こういう子どもを育てたいからこういう風に授業改善や先生の働き方改革を実行していく。そのためにはこういう施策が必要だから、ICT支援員にはこの部分を担ってもらう」という明確な「配置の目的」を教育委員会も現場もICT支援員も、関係者全員が腹落ちしている状態の自治体は非常にうまくICT支援員が伴走支援を実施できています。

「ICT支援員を配置している」だけではもう十分ではありません。
どのようなことをICT支援員に実施してもらいたいのか明確に定め、そのうえでどのような人材をICT支援員として採用あるいは業務委託し、育成まで考えることができるか、ということが重要です。例えば以下のような人材のうち、ご自分の自治体に必要なのはどのようなICT支援員でしょう。考えてみてください。

  • 教員との協働で授業を改善できる人材
  • 校務DXやデータ活用を支援できる人材
  • 教育委員会と学校の橋渡し、パイプ役ができる人材
  • 高度なセキュリティ知識を持ち、アカウント管理ができる人材 等々

自治体がより良い教育を実現するためにICT支援員を活用できる次のアクション

1️⃣ 配置状況を「見える化」する
 学校単位での訪問頻度・支援時間・内容を可視化し、実効性を評価します。

2️⃣ ICT支援員の育成を「自治体主導」で行う
 業務委託の中にICT支援員研修等の育成項目を入れているだけでは、「その業者の考える育成」になります。(ちなみに私の修士論文はICT支援員の研修における指導主事等の関りの検討」です。指導主事が研修に関与することの有効性を示しました)研修、育成は、自治体主導で実施することが大切です。

3️⃣ 財政措置を「活用できる仕組み」に変える
 年度単位ではなく、複数年契約や広域連携による安定運用を検討することが必要でしょう。毎年「来年の仕事があるのかないのかわかりません」という状態で働く人の育成は困難です。

4️⃣ 支援の成果を教育施策に還元する
 ICT支援員が現場で拾う課題を、次年度の計画・予算に反映させる仕組みづくりが重要です。ICT支援員は現場と教委をつなぐパイプ役です。課題感の擦り合わせは特に有効ですので、行政職の皆様もICT支援員とぜひお話ししていただきたいと思います。

おわりに ― 支える人が増えるほど、学校は変わる

ICT支援員は、派手ではありませんが確実に学校を変える存在です。
支える人が多ければ多いほど、挑戦する先生も増えます。

「4校に1人」という数字を超えて、
「1校に何人の大人が子どもたちの学びを支えているか」を考える時代に入りました。

教育の情報化を進める自治体の使命は、支援の「量」を増やすことと、「支える人の質と仕組み」を磨くことです。(支援人材の不足感については先回のHBI通信でもお話ししました)
ハイパーブレインは、先生方の伴走者として、そして、行政職の皆様の伴走者、より良きパートナーとして、これからも全国の現場を支えてまいります。「そういうこと言われても困るんだよ」というお困りごとは、ハイパーブレインに何でもご相談ください。

ご質問や資料請求などは、お気軽にお問い合わせください

お電話でのお問い合わせはこちら

受付時間 9:00~18:00[土・日・祝日除く]

メールでのお問い合わせはこちら

投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの常務取締役です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。