今年度のDX、何が前に進みましたか? ― 振り返りから始める「教育DX 次の一手」

はじめに ― 「前に進んだこと」を言葉にできますか

年度末が近づくと、教育委員会の中ではさまざまな振り返りが行われます。教育行政計画あるいは教育振興基本計画の進捗状況、自治体自身の総合政策との整合性などは「エビデンス」「数値」ときっちり出すことを求められていらっしゃるでしょう。

さらには文部科学省からの「教育の情報化に関する実態調査」や「自治体における学校のICT関係決算状況等調査」で聞かれるGIGAスクール構想第2期の整備状況やセキュリティに対する対策、ICT支援員を何名配置し予算をどれだけつけたか等々……
やるべきことは多く、日々の業務に追われる中で、

「今年度前に進んだものは何だろう?」

と立ち止まって考える時間は、案外取れていないかもしれません。

この連載では、「制度は読んだ。その先で、何を考えるか」をテーマに、行政職の皆様とご一緒に「次の一手」を整理していきます。
その第1回として、まずは振り返りから始めてみたいと思います。

「できたこと」と「進んだこと」は違う

今年度、多くの自治体では次のような取り組みが進んでいらっしゃったと思います。

  • セカンドGIGAスクール構想のための共同調達を前提とした調達事業
  • 端末変更に伴う様々な見直し・手続き(OS変更だと更に大変ですね)
  • 校務DXへの取り組み、調査
  • ICT支援員の配置・増員

どれも重要で、確実に「できたこと」です。ご担当の方は初めてのことも多くあり、とても大変でいらしたと思います。特に共同調達は、「理念はよくわかる」のはどの立場の誰もが思っていることですが、その理念をもとに実際に現場を動かすのは大変なこともおありだったのではないでしょうか。本当にお疲れさまでした。(これからの方はお疲れ様です)

さて、ここで一つ立ち止まって考えてみたいのは、

それは「前に進んだこと」といえるかどうか

です。たとえば、

  • 端末は入ったが、アカウントの整備が遅れ、使い方は以前と変わっていない
  • 校務DXと言いつつ、業務の流れはそのまま
  • 支援員は配置されたが、現場からも支援員からも役割について困りごとの相談がある

こうした状態であれば、「整備」は進んでも、「変化(あるいは業務が楽になる、学びのハードルが下がりたくさん学ぶことができる等)」は限定的かもしれません。

教育DXの振り返りで、よくあるズレ

自治体のDXを振り返る場面で、よく見られるズレがあります。わかりやすい指標、定量的な指標を設定することが求められる状況はどこの自治体も同様でしょう。ただ、

  • 導入したかどうかで評価してしまう
  • トラブルがなかったかだけを確認して終わる
  • 活用は学校任せになっている

ということはいかがでしょうか。もちろん、この状況は決して間違いではありません。教育委員会行政職は、首長部局に比べて「あれもこれもそれもどれもぜーーーーーーんぶよろしく」という立場でいらっしゃることも多く、指導主事の大半は行政事務より授業が上手な先生でいらっしゃるでしょう。どの立場の方も、一生懸命仕事に取り組まれ、努力していらっしゃることは重々承知しています。リソースが限られている以上、できることも限られることは当然です。

ただ、これだけでは 「次にどう進めばよいか」 が見えてきません。

教育DXの振り返りで本当に必要なのは、皆様おわかりのとおり、「どこまで仕組みが変わったか」 までを確認することです。

振り返りの軸は「仕組みが残ったか」

ここで、私から、振り返りのための以下のような視点をご提案します。ご参考いただけると幸いです。

今年度の取り組みで、次のものは残りましたか?

  • 担当が替わっても説明できる資料
  • 学校・教育委員会・支援員(ICT支援員はじめ司書、スクールサポートスタッフら)で共有できるルール
  • 問い合わせや課題が蓄積される仕組み
  • 次の改善につながる気づき

もしこれらが残っていれば、それは「今年度、確実に前に進んだこと」だと言えます。(全部あると最高ですが、1つだけ、一部だけ、というのも十分な前進です)

逆に、

  • 特定の人の頭の中にしかない
  • 異動とともに消えてしまう
  • 来年度また同じ議論をしそう

という状態であれば、それは「まだ途中」なのかもしれません。そのような状態であることが直ちに問題だ、という風に申し上げるつもりはありません。お一人でできる仕事の範囲は限られています。ですので、「まだ途中」なんだな、とそれだけご理解いただけるといいのかな、と思います。

「次の一手」は、反省からではなく整理から

年度末の振り返りというと、つい「できなかったこと」「課題」ばかりに目が向きがちです。特に、指導主事になるような真面目な先生は、真摯に反省されます。とても大切な姿勢だと思います。

ですが、教育DXにおいて反省も大事ですが、整理することもとても重要です。

  • 何が整ったのか
  • 何が回り始めたのか
  • 何がまだ属人化しているのか

これを丁寧に言葉にすることで、次の一手は自然と見えてきます。

最初から完璧な言語化はできませんから、まず、ご自分が知っている範囲で書き出してみて、それを上記分類に当てはめてみるとどうか、他の方のご意見はどうか、と進めていただくとより良いかと思います。ご自身の認識と、周囲の認識のギャップが少なければ少ないほど、属人化が避けられているという傾向になるのではないでしょうか。

おわりに ― 次の一手は、もう始まっています

教育DXは、年度で区切れるものではありません。今年度に整えたものは、来年度の土台になります。

だからこそ、「今年度、何が前に進んだのか」を言語化できる自治体ほど、次の一手も迷わずに打つことができます。

3月に入ると本格的に年度更新が始まり、目の前の業務、作業に追われる方も多いのではないかと思います。2月上旬という今こそ、少しだけ時間を取って、振り返ってみていただけると、来年度スムーズに始められるのではないかと思います。(私たちはご担当の方が異動される可能性があることを承知していますが、できれば教育委員会のICTに関わる部分は長く携わる方にいていただきたい、と思っています、人事の方どうかどうか1年で担当変更だけはご容赦ください)

次回は、
「次の調達で、変えていいこと・変えてはいけないこと」
をテーマに、セカンドGIGAスクール構想を「更新」で終わらせないための考え方を整理します。

読者の皆さまへ

ハイパーブレインは、今年度、あなたの自治体で「人が替わっても残る仕組み」は、何がありましたか? から伴走し、ともに「未来をつくる人材」を育ててまいります。少しでもご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの常務取締役です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。