国際的な調査結果から見る教員の多忙化

皆さんこんにちは。
教員の多忙化について、実際の現場での調査、法律の観点、とご紹介してまいりましたが、今回OECD国際教員指導環境調査(TALIS:Teaching and Learning International Survey・学校の学習環境と教員の勤務環境に焦点を当てた国際調査)を用いてご説明をさせて頂ければと思います。
2013年の第2回調査で日本は初参加しました。34か国・地域の教員を対象とした調査結果は非常に興味深い内容となっています。http://www.nier.go.jp/kenkyukikaku/talis/
調査のポイントは文科省から発表されていますhttp://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2014/06/30/1349189_2.pdf が、その中から今回のテーマに沿った「教員の多忙化」について、世界と比較して日本はどうなのか、というところをピックアップしていきます。

たとえば調査書9Pの学校における教育資源の調査項目の一つ「支援職員の不足」を感じている教員の割合ですが、日本は72.4%とイタリアに次いで2番目に不足を感じている形になります。
参加国・地域平均は46.9%ですので、とびぬけていますね。http://www.nier.go.jp/kenkyukikaku/talis/imgs/talis2013_summary.pdf
公表された当時様々な波紋を呼んだ「教員の仕事時間」については、紹介されている記事ほとんどすべてで取り上げられているように

  • 1週間の仕事時間 53.9時間(参加国・地域で最も多く、唯一の50時間台)
  • 課外活動の指導 7.7時間(参加国・地域で最も多く、唯一の7時間台)

が、目立ちます。

この調査では、仕事の内容として

  •  ・指導・授業に使った時間
  •  ・授業準備に使った時間
  •  ・同僚との打ち合わせ時間
  •  ・生徒の課題の添削・採点
  •  ・生徒相談
  •  ・学校運営に参画した時間
  •  ・事務作業
  •  ・保護者との連絡・相談
  •  ・課外活動
  •  ・その他

と分類しています。
日本の先生がとびぬけて多いのが先に述べた課外活動の時間ですが、ほかにも事務作業5.5時間が目立ちます。
つまり、1日に10時間以上仕事をし、そのうち1時間は事務作業で1.5時間は課外活動指導をしている、という先生像が浮かび上がってきたわけです。

授業準備や採点は別に時間を数えていますから、事務作業とは完全に事務的作業です。
例えば給食費の徴収や、あちこちから大量に送られてくるチラシ類の増し刷り、学級費の会計、備品の発注・登録等、事務職員が学校全体を管理していても、各担任が確認しないといけないものが多くあるわけです。

それなら運用を見直そう、という考えはもっともなのですが、全校1000人いるような学校で、一人の事務職員がすべての児童生徒の状況を把握できているとは限りません。
給食費が3か月滞っている児童がいたとして、もしかしたらその子は持たされた給食費を落としてしまったのかもしれませんし、事情があってこの3か月だけは期日に払えないけれど必ず次月は払う、という状況なのかもしれません。それを担任がよく観察して事情を聴くのと、いきなりつながりの薄い職員から「給食費支払ってください」というのとでは教育現場の対応としてどちらが適切なのかは行政職の皆さんもわかっていただけると思います。

課外活動については、議論が盛んなように手当はほとんど出ず、まさしく先生の熱意に頼っている状態です。
子供たちが課外活動で得られるものは非常に大きく、大切なものですが、先生にとっては「子供たちの成長が活動の糧」で、指導したことも経験したこともない課外活動を担当している先生も多くいます。

3回にわたって先生が多忙な状況をお伝えしてきました。外から見ているだけではわかりにくい先生の状況を行政職の皆さんに少しでもわかっていただければこんなにうれしいことはありません。

次回からは教育の情報化加速化プランについてご説明させていただきます。

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