自治体によってニーズの違うご支援をどう明らかにしていくかが重要です

皆さんこんにちは
2017年12月に公開された「ICT支援員の育成・確保のための調査研究事業 成果報告書」http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1398432.htm についてご説明をさせていただきます。
この事業は、ICT支援員に求められる資質・能力を「スキル標準」として明確にし、一定の資質・能力を備えたICT支援員を育成するための「育成モデルプログラム」を開発することにより、ICT支援員の育成・確保(不足の解消)を図ることを目的の1つとして行われました。

春爛漫寄り添うご支援のイメージ

 本日は第3章 実態調査 3-3 調査結果のまとめをご説明させていただきます
 調査結果を受けて、4章以降はICT支援員の業務整理が行われるわけですが、この調査で明らかになった重要な内容がコンパクトに述べられています。
 調査委員会で業務内容の洗い出しを行いましたが、自治体によって業務の有無が異なっていることがはっきり分かったことは収穫です。また、業務整理、スキル設定にあたっての必要な観点と、ICT支援員の育成確保のための視点から検討が必要な点が浮き彫りになってきた、とあります。

 報告書ではまず、自治体による業務内容の違いについて説明があります。
 資料3にまとめられている、調査委員会が想定した業務及びスキルと大きな隔たりはなかったことがわかりましたが、そのすべてが自治体で求められているわけではなく、積極的に「必要ない」と明言する自治体もあるなど考え方がさまざまであるとまとまっています。

 例えば、雇用形態ですが、業務委託の良さを述べる自治体もあれば、直接雇用の良さを述べる自治体もあり、どの意見も「確かにもっともだ」と思わせる説得力があります。
 直接指示命令を行えることをメリットに考えている自治体は、よいICT支援員との出会い、担当者の熱意がそろっていれば直接雇用の方法で大変スムーズに支援が進みます。
 質をそろえる、採用・評価・管理に自治体職員の時間を使うのではなく、良い教育を考える時間のために職員の時間を使う、ということを考えている自治体は業務委託の方法でスムーズに支援が進んでいます。

 配置形態に関しても、「何かあれば学校に出向く方式」「訪問日時を決めて定期的に学校訪問を行う方式」「常駐」とそれぞれ求めるICT支援員スキルが違います。
「何かあれば学校に出向く」支援員はよりSE的要素が強く求められ、「常駐」はより教育に携わる者としての能力を求められる傾向があります。
 ただし、これらは自治体が割ける予算額に左右されるため、学校現場のニーズと必ずしもマッチしていないということは課題であると考えられます。

 また、自治体の規模が大きくなればなるほどICT支援員の提出する報告書に重きを置く自治体が増える傾向があるということです。教育委員会の担当者がすべての現場を見て回ることができない規模の自治体では、代わりにICT支援員が見聞きしたことを活用しているということですね。

 このように様々なニーズがあることがよりはっきりと明らかになったわけですが、導入後何年経っているか、ということも非常に重要なファクターとなっています。導入時期は「とにかく使えるように使い方を教えてほしい」、先生が使い方に慣れたら「より良い使い方ができる提案をしてほしい」、とニーズは変化していきます。

 これらを踏まえて、ICT支援員もどういう状態の自治体でご支援を行うかによって求められるスキルが変わってくることが明らかになりました。

 つまり、ICT支援員の育成・確保のために考慮すべき点がわかってきたということですね。

 例えば、学校ICTに関わる役割整理では「ICT支援員の役割とは何か」が明確になっていないことがわかりました。だからこそ自治体によって業務範囲が異なるわけで、「管理職(教育委員会)」「教職員」「ICT支援員」「保守業者・納入業者等の事業者」が本来行うべき業務を定義する必要があることがわかったということですね。
 また、活用段階に応じた支援業務、スキルの整理も必要です。まずは「導入段階」「普及段階」の2段階で業務を整理し、レベル分けを行う必要があると結論付けられています。これで「普及段階」であってもICT支援員が必要である、ということの説明にもなることが期待されます。

 育成の観点からはさらに2点検討することが必要だと述べられています。

  •  ・適切な支援頻度の検討
  •  ・予算措置に関する検討

 上記2点についても、支援員個人、各自治体毎に考えるのではなく、全国的になんらかの方策を考えることができれば、よりICT支援員の育成・確保が進むと予想されています。

 これら「混沌とした状況」が明らかになったことだけでも今回の調査は有意義ですが、それを基にどれだけよりよいご支援ができるのか、次回からはさらに具体的な業務洗い出しの結果等についてご説明させていただければと思います。

 ICT支援員についての議論や検討を重ねて、よりよいICT支援を行っていきたいと考えております。

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