令和の日本型教育とは4

皆さんこんにちは。

「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)が令和3年1月26日に中央教育審議会より出されました。

この答申を少しずつ読んでいきましょう。今までチュウキョウシントウシンとカタカナで聞こえていた内容が、中教審答申と漢字で聞こえるようになるように、行政職の皆様も知識を蓄えていっていただければと思います。

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本日は第1部総論の2「日本型学校教育の成り立ちと成果、直面する課題と新たな動きについて」の続きを読んでいきましょう。「2今日の学校教育が直面している課題」です。

学校が様々な課題に直面していることは昔から言われていることですが、最近特にいろいろな課題が浮き彫りになっています。最初に「国において抜本的な対応を行うことなく日本型学校教育を維持していくことは困難であると言わざるを得ない」とあり、強い決意がうかがえます。

1つ目の課題は、「子どもたちの多様化」です。昔から子どもたちは多様であったと思いますが、医学の発達等で、「それは子どものやる気やしつけでなんともすることができないものである」という状態があることが分かってきました。昔なら「親のしつけが」「殴ってでも縛ってでもいうことを聞かせる」というようなものが、例えば発達障害の可能性がある、という診断によりもう少し生きやすい選択ができるようになる、というような形ですね。

特別支援学級の増加や、特別支援学校の在籍数の増加等にも表れています。

それに加えて、外国人児童生徒の増加、日本国籍ではあるが日本語指導を必要とする児童生徒の増加もある、とあります。10年前の1.5倍、5万人を超えているということです。2万人の外国人児童生徒が就学していない可能性もある、という調査結果はショッキングですね。

更に、18歳未満の子供の相対的貧困率が13.5%である旨が書かれています。7人に一人が、経済的困窮を背景に、教育や体験の機会に乏しく、地域や社会から孤立し、様々な面で不利な状況に置かれてしまう傾向にあると言われています。

そして、いじめや暴行事件、不登校児童生徒はいずれも増加傾向にあるということです。児童生徒の自殺者数も減少はしておらず、児童虐待相談対応件数についても増加傾向、ということで、歪んだ構造の、イライラのはけ口が弱者に向かい、どうしようもない状況に置かれている子どもたちが増えている可能性がある、ということですね。

これらのことを踏まえると、学校は、「全ての子供たちが安心して楽しく通える魅力ある環境であることや、これまで以上に福祉的な役割や子どもたちの居場所としての機能を担うことが求められている」とあります。学校は学習をする場、というだけではないということが謳われているわけですね。これはまさしく日本型教育の考え方の根本にあるものだと思います。

答申では続いて、生徒の学習意欲の低下について懸念が書かれています。特に高校生の意欲や学校生活等への満足度が下がっているということが数字で述べられています。高等学校の特色化、魅力化を推進することが求められている、とあります。

更に、教師の長時間勤務による疲弊が述べられています。小学校で月に59時間の時間外勤務、中学校で月に81時間の時間外勤務が平均的に行われている、という調査結果は当初先生方にとって「え、そりゃそうだけど」という風に受け止められた、と私は感じています。ですが、平均で81時間は平均で過労死ラインを超えているわけです。

新型コロナウイルス感染予防対策のための新たな消毒等や指導、子どもたちのケアなど負担は増える一方です。何も削られていません。

これらの事実の影響かどうかの統計的な調査はされていませんが、精神疾患での休職年間5千人というような状況も踏まえて、教員採用試験の倍率も、下がり続けているということです。しかも、採用してもすぐに欠員が生じたり、そもそも必要な人数の先生が集まらない、という教師不足も深刻化している、と答申は認識しています。

私のご支援する自治体には「校務主任」という役割がありますが、以前は校務主任は校務主任の仕事だけしていればよかったのに(それでもとてもとてもとても多忙でした)、現在では「校務主任と担任」という聞いただけで倒れそうな役割をこなされている先生方が数多くいらっしゃいます。

また、情報化の加速度的な進展に関する対応の遅れ、という点に関しても述べられています。よく言われているのが、「20年前に書かれたICT利活用の本が今でも十分に参考になる」点です。これはHBI通信でも繰り返し述べてきました。

それに加えて、少子高齢化、人口減少の影響も深刻です。子どもたちが減るのですから、学校も減ってしまいます。1自治体に1小学校、1中学校という自治体の増加、公立高等学校の立地が0または1の自治体は1088団体、全体の62.5%という結果が述べられています。田舎は学校自体が少ない、ということですね。

最後に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により浮き彫りとなった課題、が挙げられています。

臨時休業に伴う「オンライン授業」についての現場の混乱ぶりは行政職の皆様にも記憶に新しいところでしょう。2020年の休校時の「同時双方向型のオンライン指導」は公立学校の設置者単位で15%にとどまっているという調査結果が紹介されています。要するに、85%の子供たちが、同時双方向型のオンライン指導を受けていない、ということですね。

また、「指示がないから何もしない」という子供たちの実態が明らかになり、自立した学習者を十分育成できていない、という指摘があることも述べられています。

先生の言うことが絶対、先生が言うまで何もしてはいけない、という指導ではないはずですが、結果そうなってしまっている子どもたちがいる、ということですね。

答申では、「平常時から児童生徒や教師がICTを積極的に活用するなど、非常時における子どもたちの学習機会の保障に向けた主体的な取り組みが求められる」と結ばれています。

次回は第1部総論2.日本型学校教育の成り立ちと成果、直面する課題と新たな動きについての続きを読んでいきます。

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