「令和2年度第3次補正予算について」のご説明

今回は「令和2年度第3次補正予算案への対応について」のご説明をさせていただきます。

GIGAスクール構想における令和2年度3次補正予算は209億円となっており、その内訳は以下のようになっています。

国公私立の高等学校段階の低所得世帯等の生徒が使用するPC端末整備を支援:161億円
家庭学習のための通信機器整備支援(対象:国・公・私立の小・中・高・特支等):21億円
オンライン学習システム(CBTシステム)の導入:22億円
障害のある児童生徒のための入出力支援装置整備:4億円
学習系ネットワークを学校から直接インターネットへ接続する方式に改めるための整備を支援:学校施設環境改善交付金の内数

内訳から、今回の補正予算の多くは高校生の支援に使われていることがわかります。
合計209億中161億が端末の補助費に、21億が家庭の通信設備の整っていない世帯の補助に使われています。
第1次、第2次補正予算では高校生への通信設備補助は盛り込まれていませんでしたが、今回初めて盛り込まれました。

小中学校への支援に比べると予算が非常に少なく見えますが、小中学校では全ての子供に一人1台端末を支援するのに対して、今回は低所得世帯の高校生が対象になっています。

この理由として、資料内では
「高校における端末整備については、地方自治体が独自の財源を確保して整備を進めている事例や、機器等を指定した上での保護者負担による整備事例、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用している事例など多様な整備実態があることを踏まえ、子供の学びの保障と機会均等の観点から、国としては、低所得世帯の高校生に対する貸与等を目的として設置者が行う端末整備に対して補助を行う」
とされています。

また、小中学生と比較して高校生のスマートフォン所持率は9割程度と高く*1、ICTを用いた授業にBYODを行っている学校が既に多くある*2ことなども理由として考えられます。

インターネット利用率(機器・学校種別)
<参考資料 令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)(最終閲覧日2021年1月29日)
https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r01/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf>

なお、低所得世帯とは「高校生等奨学給付金を受給している者」を指すことがFAQで明言されており、一人1台の端末が確保されている場合でも、受給者の割合を上限として補助を申請できるとされています。(補助上限は小中学校と同じ一人当たり4万5千円です。)
また、低所得世帯に該当しない生徒であっても、予算上限までは、実情に応じて適切な運用をして欲しいとあるため、ある程度柔軟な運用が可能になりそうです。

次に、CBTシステムについてご説明します。CBTシステムとはComputer Based Testingの略で、学力調査をコンピュータで行うシステムのことです。

CBTシステムを全国的に導入することで、児童生徒の学びの結果をデータとして取得し、指導へフィードバックすることや、全国の児童生徒の学力状況を把握して教育施策として活かすことが期待されています。*3
また、PISA2015で行われたように、今後の国際的な学力調査はコンピュータを用いて行われるようになっていくと考えられ、その際に、より正確な学力をテストに反映できるよう、児童生徒がCBTシステムに慣れておくことも重要であると考えられます。

政府が具体的にCBTでどのようなシステム開発を行っているかはこちらからご覧いただくことができます。

最後は、学校の学習系ネットワークの整備についてのご説明になります。
今回の学習用ネットワークの整備支援の条件は、「各学校から回線を一旦集約してインターネット接続する方法をとっている自治体に対して、学習系ネットワークを学校から直接インターネットへ接続する方式に改められるよう支援する」となっており、学校施設環境改善交付金からの補助となっています。
(学校設置者単位で400万円(事業費)以上の事業が対象、1校当たり最大100万円が上限、学校環境改善交付金についてはこちらに詳しく記載されています。)

例えば、一旦教育委員会へ回線を集めてから外部ネットワークに繋ぐなどの方法をとっていて、学習用に必要な通信量を満たすことが難しいような場合、今回の補正予算を利用して学習用ネットワークの環境を整えることができます。
これによって、ネット回線はあるが、学習用としての実用には適さないという学校も、学習用ネットワークを直接学校へ引き入れることができるようになります。

このように、今回の補正予算は、1人1台端末環境で学んだ児童生徒が高等学校に進学しても切れ目なく同様の環境で学べるようことが主目的として組まれていることがわかります。

これまでと違うところは、これまでは予算が届かなかったところや、ネットワークは存在するが、実際に学習用に使うことができない学校の支援に予算が向かっている所です。
このようなところに予算が向き始め、いよいよGIGAスクール構想の物的な実現は間近に迫っているように感じられます。

今回の補正予算について、先生方のご理解の一助になることができれば幸いに思います。

<参考資料>

*1 令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)(最終閲覧日2021年1月29日)

*2 旺文社 【2020年度】全国の高等学校におけるICT(※1)活用実態調査―タブレット導入率が約半数に。生徒のスマートフォンを教育利用する「BYOD(※2)」導入も拡大(最終閲覧日2021年1月29日)

*3 全国的な学力調査の CBT 化検討ワーキンググループ 中間まとめ 「論点整理」17p(最終閲覧日2021年1月29日)

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