教育振興基本計画24

皆さんこんにちは。

令和5年6月、新たな教育振興基本計画が閣議決定されました。

そもそも教育振興基本計画とは、「教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。」と説明にある通り、政府が教育をどのようにしていくか、という施策のもとになるものです。

特に行政職の皆様はしっかりコンセプトや計画を確認して、ご自分の自治体の施策にご活用いただければと思います。なぜなら、予算が通りやすいからです。自治体独自の施策を実施しようとしたときに、「教育振興基本計画のこの部分に則っています」という説明は大変有効ではないでしょうか。

本文のボリュームも多く、新しい言葉も次々出てきますが、ゆっくりご一緒に確認していきましょう。

Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策

(目標、基本施策及び指標)

目標7 多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂

計画内で何度も繰り返し多様な教育ニーズの対応、というのは出てきています。現場の人力にかける、先生が頑張る、ではない多様な教育ニーズへの対応には、ICT機器の利活用が必須です。

先生方は、子どもたちの様子を見るために、とてつもない労力をかける必要はありません。まずは、ICT機器を活用することで収集することができることを把握すればよいと思います。

そういうと「人間のあたたかみが」「教師のプロフェッショナルな視点が」という話になるのですが、人間のあたたかみを重要視して、クラス35人全員を毎日毎時間見て、様子が少しでもおかしければ声をかける、というようなことは、物理的に不可能な状況です。

プロの教師なら、ちょっとした子供の変化に気付くものだ、というのは大変その通りだと思います。では、日本全国の先生が毎日全員「ちょっとした子供の変化に気付く」ことができる状況でしょうか。もしかしたら、大切な人が入院することになって、動揺している先生がいらっしゃるかもしれません。介護で疲れ果て、昨夜は1時間も眠れなかった先生がいらっしゃるかもしれません。プロの先生でも、人間である限り、毎日完璧なコンディションである、ということは不可能です。

なので、そういうしんどい時、辛い時にもICT機器を使ってある程度の子どもの様子を収集することができれば、今までできなかったフォローができるようになるのでは、というご提案です。

機械が完全に人間を超えるのはまだ先のことでしょう。でも、私も疲れた時によくなりますが、ポンコツな自分が状況把握するよりも、データで見える部分を状況把握したほうが、より良い結果を得られる、ということはあります。

多様な教育ニーズにこたえていくことは今後必要なことです。そのために、ICT機器を活用する、という選択肢を多くの先生方に持っていただきたいと思って当社は活動しています。

基本施策は以下の通りです。

  • 特別支援教育の推進
  • 不登校児童生徒への支援の推進
  • ヤングケアラーの支援
  • 子供の貧困対策
  • 高校中退者等に対する支援
  • 海外で学ぶ日本人・日本で学ぶ外国人等への教育の推進
  • 特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援
  • 大学等における学生支援
  • 夜間中学の設置・充実
  • 高等学校定時制課程・通信制課程の質の確保・向上
  • 高等専修学校における教育の推進
  • 日本語教育の充実
  • 教育相談体制の整備
  • 障害者の生涯学習の推進
  • 障害者の文化芸術活動の推進

ものすごくたくさんありますね。どれも本当に大切なことです。多様なニーズがこれだけに収まるわけではありませんが、まずはどれもこれも落とせないと国が考えているということがわかります。

指標もたくさんあります。

  • 幼・小・中・高等学校等において個別の指導計画・個別の教育支援計画の作成を必要とする児童等のうち、実際に作成されている児童等の割合の増加
  • 小・中・高等学校等において通級による指導を受けている児童生徒数の増加
  • 小・中・高等学校等に採用後、おおむね 10 年目までの期間内において、特別支援学級の教師や、特別支援学校の教師を複数年経験した教師の割合の増加
  • 学校内外で専門機関等の相談・指導等を受けていない不登校児童生徒数の割合の減少
  • 不登校特例校の設置数の増加(5年後目標値:全都道府県・指定都市への設置)
  • 夜間中学の設置数の増加(5年後目標値:全都道府県・指定都市への設置)
  • 困りごとや不安があるときに、先生や学校にいる大人にいつでも相談できると感じている児童生徒の割合の増加(再掲)
  • 公立学校における日本語指導が必要な児童生徒のうち、日本語指導等特別な指導を受けている者の割合の増加
  • 学校卒業後に学習やスポーツ・文化等の活動の機会が身近に確保されていると回答する障害者の割合の増加
  • 在留外国人数に占める日本語教育実施機関・施設等における日本語学習者数の割合の増加

数値での目標は示されていませんが、増える、減るについてこれらがとても重要な指標であることは間違いないですね。

来週は教育振興基本計画Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策の(目標、基本施策及び指標)の続きを読んでいきます。

投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。