「デジタル教科書の導入・管理に関係する統一されることが望ましい仕様等」のご紹介

2022年3月4日に、文部科学省より「「デジタル教科書の導入・管理に関係する統一されることが望ましい仕様等」に関する考え方」が公表されました。今回はデジタル教科書の導入にあたり、どのような仕様が統一されることが望ましいか、文部科学省の公表している今後の展望についてご説明させていただきます。

現在のデジタル教科書の導入の壁

現在のデジタル教科書の導入で大きな壁となっているのが、「導入のために必要なデータ入力が、事業者によって異なる」ことです。

例えば、A社、B社、C社のデジタル教科書を使用しようとすると、それぞれの事業者で用意されたフォーマットへ別個にデータを入力する必要があります。これは現場で作業をする先生方にとって大変なお手間です。また、入力回数が増えるほど、間違ったデータを入力してしまう可能性も高くなってしまいます。

現在のデジタル教科書導入フロー図

<出典:文部科学省 デジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループ(第2回)配布資料
(資料2)学習者用デジタル教科書導入の際の登録等に係るフロー図(イメージ) (PDF:160KB) P1
https://www.mext.go.jp/content/20210902-mxt_kyokasyo01-000017712_02.pdf
(最終閲覧日2022年4月22日)>

統一に向けた基本的な考え方

そういった事情があり、文部科学省から「デジタル教科書の導入・管理に関係する統一されることが望ましい仕様等」が公表されました。

公表された仕様では、各事業者で必要な入力情報は可能な限り統一され、一度のデータ入力で複数の事業者のデジタル教科書の使用申請ができるようになります。これによってデータ入力の手間を大幅削減し、何度もデータを入力することによる入力ミスを防ぐことができます。

文部科学省では、「令和6年度にデジタル教科書が本格的に導入されることを見据え、統一化したCSVフォーマットの検討に当たっている」*1とのことですので、それまでに上記の仕様が統一されることが期待できます。

標準化後のデジタル教科書導入フロー図

<出典:文部科学省 デジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループ(第2回)配布資料
(資料2)学習者用デジタル教科書導入の際の登録等に係るフロー図(イメージ) (PDF:160KB) P2
https://www.mext.go.jp/content/20210902-mxt_kyokasyo01-000017712_02.pdf
(最終閲覧日2022年4月22日)>

ただし、複数の事業者のデジタル教科書を使用する場合には、セキュリティの関係上事業者によってパスワードを変えることが望ましいため、パスワードの入力にはどうしても手間がかかります。

また、複数の事業者のデジタル教科書を使用すると、教科書ごとにサインインが必要で面倒ではないかとお考えの行政職の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな時に便利なのが、シングルサインオン機能です。

シングルサインオン機能について

シングルサインオンとは、「一度のユーザー認証で複数の異なるサービスの認証と利用を可能にする仕組み」*2のことで、例えばA社、B社、C社のデジタル教科書を使用したい場合に、1度のログインでそれら全てが使えるようになります。入力の手間だけでなく、パスワードの設定・管理の面でも非常に便利な機能です。
(シングルサインオン機能を利用するには、ご利用の学習eポータルサイトとデジタル教科書を発行している事業者が機能に対応している必要があるため、注意が必要です。)

学年の自動算定について

また、現在はデジタル教科書を使用するにあたり、学年が切り替わったら再度登録し直すという手間が発生しています。

現在の仕様ですと、デジタル教科書の使用申請をそれぞれの事業者へ申請する必要があることも相まって、大変な労力が掛かります。
今回の資料で示された展望では、「入学年西暦」を入力すると、学年を自動で算出してくれる機能の拡充についても、強く期待されています。*3この機能が標準として実装されるようになれば、特別な事情を持つ児童生徒以外は一度入力を行えば、以後はその事業者のデジタル教科書を使用することが出来るようになります。

これらの機能の他にも、児童生徒へ配るログイン情報を記載したユーザーカードの出力の検討など、学校現場でかかる手間を極力減らす方向へ仕様を統一しようとしていることがわかります。

今後のデジタル教科書

デジタル教科書は登場当初、UIやボタンの配置も各社様々で、物によって使い方が違う、という状態でした。しかし、それでは使い勝手が良くないということで、様々な面で統一の方向性が模索されてきましたが、完全な統一には至っておらず、まだ各社で機能が異なっていたり、ボタンの呼び方がバラバラであるなど異なる部分もあり、使っていて違和感があるとなどといった問題が残っています。

これらの問題に対しては、文部科学省の「デジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループ」にて、「ボタンの位置や形,大きさ,また,コマンドの階層などを標準化していくことができるのかを模索していく」*4、消しゴムなどの機能についても「名称をそろえる配慮をする」*4旨の発言がされています。

今後のデジタル教科書は、文部科学省の提言に沿って、誰でも違和感なく使えるようになりつつ、デジタル教科書ならではの機能を取り入れて進化してくことが期待されます。

ここまでお読み下さいまして、ありがとうございました。
今後のデジタル教科書導入を考える際の参考となることができれば、幸いに思います。

デジタル教科書に関するお悩みがございましたら、ハイパーブレインのヘルプデスクで解決します。
是非お気軽にお問い合わせください。

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引用

*1 文部科学省 「デジタル教科書の導入・管理に関係する統一されることが望ましい仕様等」に関する考え方 p2
https://www.mext.go.jp/content/20220325-mxt_kyokasyo001-000021507_01.pdf

*2 文部科学省 「デジタル教科書の導入・管理に関係する統一されることが望ましい仕様等」に関する考え方 p4
https://www.mext.go.jp/content/20220325-mxt_kyokasyo001-000021507_01.pdf

*3 文部科学省 「デジタル教科書の導入・管理に関係する統一されることが望ましい仕様等」に関する考え方 p6
https://www.mext.go.jp/content/20220325-mxt_kyokasyo001-000021507_01.pdf

*4 文部科学省 デジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループ 議事要旨・議事録・配付資料 第1回【開催日時:令和3年7月15日(木曜日)14時30分~16時30分】議事録
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/157/001/gijiroku/1421924_00001.html