デジタル庁「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート結果及び今後の方向性について」のご紹介3

前回は、デジタル庁の実施したアンケート「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート結果及び今後の方向性について」について、子供たちへのアンケートでどのような意見が集まったか、アンケート結果を分析して何がわかったかについてご説明させていただきました。

今回は、大人(教職員・保護者)へのアンケートでどのような意見が集まったか、アンケート結果を分析した結果、どんな課題が見えてきたかについてご説明させていただきます。

大人(教職員・保護者)へのアンケート結果

大人へのアンケートの結果は課題ごとに分析され、
「学習者(児童生徒)について感じる課題」
「教職員について感じる課題」
「学校その他の関係機関について感じる課題」が分析されています。

また、自由記述欄で頻出する単語の関係を解析することで、保護者・教職員・学校関係者がそれぞれ何を求めているのかを分析しています。

まずは、学習者(児童生徒)に対して感じる課題のアンケート結果を見てみましょう。分析結果は、下図のようになっています。

アンケートの分析結果7大人からの意見1

<出典:デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P9
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月21日)>

分析結果から、教職員は「情報モラルが不足している」「指導方法・環境面」といった、現場での児童生徒への教育に関する課題を挙げていることがわかる一方、「家庭」「時間」といった単語が教職員と保護者両方で共通して多く見られ、家庭でのタブレット使用に課題を感じている大人が多いことがわかります。

家庭でのタブレット使用に対しては、アンケートの「国としての考え方」でも感染症や災害発生時等の非常時にやむを得ず登校ができない児童生徒に対して、ウェブ会議システムの活用等による学習指導、学習状況の把握が重要*1とされている他、学校へ不登校の児童生徒に対する授業活用*2が期待されています。

そのため、前々回でご紹介させていただいたように、児童生徒としっかり話し合って使用する際のルールを子供側の意見も取り入れた上で取り決め、できるだけ子供たちにとっても使いやすいルールを整備し、家庭でのタブレット利用を推進していただければと思います。
(そういった話し合いの例が、文部科学省StuDX Style(外部サイト)にも掲載されています。)

また、学校と保護者との間で確認・共有しておくことが望ましい主なポイントもStuDX Style(外部サイト)に掲載されていますので、ご参考としていただければと思います。

教職員に対して感じる課題

次に、教職員に対して感じる課題を見てみましょう。こちらでは、特に業務負担に関する意見が課題として多く寄せられています(下図)

<出典:デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P10
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月21日)>

教職員へのアンケート結果では、どの年代の教職員もリテラシー面に課題を感じている割合は6割程度、ICT活用に関する課題は5割程度、その次にICT整備、操作に関する課題が4割程度と続き、「特になし」の割合が1割未満となっています。

具体的には、リテラシーの高い教職員へ業務負担が偏ることや、担当教科でのICTの効果的な活用法がわからないこと、教職員へのICT活用研修が課題として挙げられています。

学校、その他関係機関について感じる課題

学校、その他の関係機関について感じる課題では、書類・各種調査のデジタル化に関する意見が最も大きくなっています。

教職員からは「書類や調査のデジタル化が進んでいない」という課題を感じている方が最も多く、その次に「ICTに精通した人材がいない」「現場のネットワークが整っていない」と続きます。

保護者では「書類や調査のデジタル化が進んでいない」「ICTに精通した人材がいない」が高く、その次に「学習者向けの端末の持ち帰りについて抑制的に対応している」が多くなっています。(下図左下)

アンケートの分析結果9大人からの意見3

<出典:デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P11
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月21日)>

また、この分析結果では、特に教職員からの意見数が多くなっていることがわかります。「特になし」と回答した保護者の数に対して、教職員側からの「特になし」という回答は半数以下となっているためです。

このことから、GIGAスクール構想に対して、学校現場での課題として特に「書類や調査のデジタル化が進んでいない」や「ICTに精通した人材がいない」「ネットワーク環境が整っていない」という現場の体制が整っていないことが、大きな課題として存在していることがわかります。

最後に、教職員・保護者・学校教育関係者のご意見から頻出する主語・述語の関係を分析し、ランキングにした結果が下の図となります。

アンケートの分析結果10大人からの意見4

<出典:デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P12
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf
(最終閲覧日2022年6月21日)>

この図の「教職員」の解析結果に特に注目してみると、上から順に
「述語・主語/目的語」が「配置/人材」「整備/環境」「行う/研修」「欲しい/サポート」「欲しい/人材」となっており、現場で働いておられる先生方が、人的なサポートが欲しいと考えていることが浮き彫りになっています。

これらのアンケート分析結果から、「書類・調査のデジタル化が進んでいない」や、「教職員のICT活用への人的サポート」が大きな課題となっていることがわかります。

「書類・調査のデジタル化が進んでいない」については、国の方針としても、今後は教育現場を対象とした調査・手続のオンライン化を推進することを決めており、校務のペーパーレス化を促進することが明言されています。*3

そのため、次に「校務のペーパーレス化」「教職員のICT活用への人的サポート」を推進するにはどうすれば良いのかを考えてみましょう。

校務のペーパーレス化について

校務をペーパーレス化することによって、テスト時等の紙面の準備や保護者への各種連絡、調査書等にかかるお金や手間を大幅に削減できます。
また、紙とデジタル両方の校務のために二重の負担がかかっている先生の業務を正常に戻すことができます。
(一方で、特に時間がなく、中々ご自身の校務のICT化に時間の取れない先生に対しては、他の人材がケアする等の注意が必要です。)

ペーパーレス化を促進する一つの方法として、学校名簿を一か所でデジタル管理するようにして、名簿が必要な場合はそこからデータを取得するルールを設定し、それを守ることを徹底する、というやり方が挙げられます。

現在の学校現場では、名簿からデータを取得し、先生のお手元で保存して利用する、とされていることも多いかと思いますが、それを無くして一元管理することで紙への派生を防ぎ、校務のペーパーレス化を促進します。

そして、学校現場でペーパーレス化を推し進める陣頭に立つのは、校長先生が望ましいです。校長先生の強いリーダーシップの下でこそ、校務のペーパーレス化が上手くいくケースが多いためです。

校長先生ではなくICTが得意な先生へ制度の整備等をお任せしたところ、他の先生の校務の進め方を変えることができず、書類とデジタル両方で校務を行わなければならなくなり、結局余分な手間がかかるようになってしまった、という例もあります。

教職員への人的サポートについて

次に、教職員のICT活用への人的サポートについて考えてみましょう。
人的なサポートについては、ICT活用を支援する人材の配備や、各種研修の必要性が多く意見されています。

研修にあたっては、「ICTを活用する知見を持っていて」「校務を理解していて」「研修を行うスキルをもった人材」が必要です。そのため、「ICT支援員なら誰でも研修をすぐに行うことができる」というわけではありません。

先生方は普段から教壇に立ち、子供たちへ授業を行っていますが、人に教えるということには、高度なスキルが必要です。

契約内容に含まれていれば、ICT支援員は、先生からのご依頼によって研修を行います。その場合には、先生からどのような研修を行いたいかをICT支援員に相談していただき、話し合った上で、研修内容を決めていただきたいと思います。

そして、そのICT支援員にとって難しい、高度な研修内容が必要な場合には、しっかりと経験を積んだICT支援員や、ICT支援員リーダー、管理者へご依頼いただくと、良い研修ができる可能性がぐっと高まります。

そういった人材が周りに見当たらない場合には、ICT活用教育アドバイザー事業(外部サイト)に登録されている業者や、ICT支援員を派遣元の事業者へお問い合わせいただければと思います。
(ハイパーブレインもICT活用教育アドバイザー事業者に登録されております。学校のICT化でお困りのことがございましたら、画面下部より、お気軽にお問合せいただければと存じます。)

校長先生に陣頭指揮を執ってもらうために

校務のペーパーレス化が行われるか否かは各学校を統括する校長先生に依るところが大きく、校長先生がリーダーシップを発揮して改革を推し進めていくことによって、現場の先生方の業務負担が改善されるケースが多くあります。

そして、校長先生に改革を推し進めていただくためには、各自治体の教育長から、校長先生にそのためのメッセージを発信していただくと上手くいく場合が多く、全国的にも教育長が教育の情報化を推し進めた結果、校務のICT化が進んだ例が複数あります。

教育長は、自治体内の全ての校長先生に号令をかけることのできる非常に数少ないお立場の方です。そのため、学校現場の先生方や保護者の負担を減らすためにも、教育長に動いていただくことも一つの方法としてご検討いただければと思います。


ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。
教職員や保護者といった大人たちが何をGIGAスクールの課題と感じているのか、またそれに対してどう対処すればよいかを考える一助となることができれば幸いです。

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引用

*1 デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P34

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/ef0c3b27-0c39-447e-a7e5-68edb9c975c9/20210903_giga_summary.pdf

(最終閲覧日2022年6月21日)

*2 デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P38

(最終閲覧日2022年6月21日)

*3 デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について 令和3(2021)年9月3日 P23

(最終閲覧日2022年6月21日)