次世代校務DXガイドブック3

皆さんこんにちは。

2025年3月(令和7年3月)に 次世代校務DXガイドブック-都道府県域内全体で取組を進めるために- が公開されました。

サブタイトルにある通り、「都道府県域内全体」での取組が重要である、という認識のもと「学校、首長部局、関連事業者等の幅広い関係者との共通認識を図る」ために使える資料です。行政職の皆様におかれましては、「どうして話が通じないんだ」と困られることもあるでしょう。それを手助けしてくれる資料となりますので、ご一緒に確認していきましょう。

2.次世代校務 DX を実現するために必要な取組

2-1.今の環境でできる校務 DX の実施

従来業務の見直しの続きを見ていきましょう。

(1)従来業務の見直し

(業務フローの見直し~業務のペーパーレス化・データ完結~)

以前は、「フローを見直しましょう」で終わっていた無難な文書が多かったのですが、このガイドラインでは「業務の過程の一部に紙を前提としたものを残してしまうことで、結果的に紙とデータの二重管理が必要になり、これまで以上に負担が増してしまうのは本末転倒です」と踏み込んで書かれています。

人類4000年、紙(的なもの)で記録し続けてきたのですから、紙の方が便利、面倒じゃない、停電でも使えるなどメリットがあることは重々承知しています。

それなら紙に振り切るかというと、「決裁板を持ってハンコ行脚」の日々も困られるということは先生方もお分かりになっていて、それはちょっとね、ということは仰ります。

デジタルと紙とが混在していると、デジタルでの保存・セキュリティルール、紙の保存・セキュリティルール、両方守らなければならないので負担が増えるのは当然です。「パソコンが入った・システムが入ったから負担が増えた」と感じるのは、デジタルと紙が混在しているからというのも理由の一つです。

現場でいくら「紙をやめましょう」と言っても、解決できないことはあります。自治体全体で本気で取り組むしかない、という状況だとご理解ください。

例えば、FAXを廃止するなら、代わりの手段を用意し、FAXで送られてきたものは取り扱わない、というようなことを自治体全体で守る、というような取り組みです。

帳票の原本を電子ファイルとすることも可能です。ただこの場合、電子署名を整備したり、帳票データのアクセスへの制御について考えたり、文書管理規程や教育情報セキュリティポリシー等の関連ルールに必要な事項を定めたりしないといけませんが、これについても自治体全体で取り組む必要がありますね。

今何とかなってるから、このポジションにいるのは長くて2年だから、もっと緊急で対応しなければならないことが山盛りだから、なんとかやり過ごして次の人よろしく! という余裕のなさが招いていることは理解しています。

ただ、もうそろそろ本気で取り組まないと無理な時期になっているということはご理解いただければと思います。

(帳票の内容の見直しや帳票の都道府県域での統一)

そして、帳票については、このような動きも出てきています。「慣例的に帳票に記載してきた事項が真に必要であるかを見直すことが必要」とある通りです。学校現場では、今残っているものは「あったほうがいい」ものばかりです。ですので、廃止となるとものすごく勇気がいることになります。思い入れがある方も多くいらっしゃるでしょう。調整はとても大変です。

ましてや、県域での統一となるとどのような困難が待ち構えているのか途方もなく感じます。

ですが、県域で統一すれば、異動時の負担を減らすことができます。帳票の内容を簡潔にすれば、それだけ業務負担が減ります。帳票として表さなければならないものなのか、今一度考え直してみる機会ではないでしょうか。

ガイドブックには奈良県奈良市の取り組みが掲載されています。ペーパーレス、帳票の電子ファイルの原本化など、まさにこのガイドブックで紹介された取り組みが実現方向に動いているということです。

GIGAスクール構想第1期で、県域でのドメイン取得、環境整備を行ったのが奈良県でしたね。その下地もあってのことだと思いますが、県域での校務支援システムについての共同調達なども進もうとしているということです。様々な困難を乗り越えて、「県全体でやったらとてもいいことがある」を実現してくれた奈良県の事例は、見習いたいところですね。

来週は、具体的な取り組み内容の続きを見ていきます。

投稿者プロフィール

大江 香織
大江 香織
株式会社ハイパーブレインの取締役教育DX推進部長 広報室長です。
教育情報化コーディネータ1級
愛知教育大学非常勤講師です。専門はICT支援員の研究です。