次世代校務DXガイドブック2

2025年4月28日 2025年4月28日大江香織

大江香織

皆さんこんにちは。

2025年3月（令和7年3月）に　次世代校務DXガイドブック-都道府県域内全体で取組を進めるために-　が公開されました。

サブタイトルにある通り、「都道府県域内全体」での取組が重要である、という認識のもと「学校、首長部局、関連事業者等の幅広い関係者との共通認識を図る」ために使える資料です。行政職の皆様におかれましては、「どうして話が通じないんだ」と困られることもあるでしょう。それを手助けしてくれる資料となりますので、ご一緒に確認していきましょう。

２．次世代校務 DX を実現するために必要な取組

ガイドブックにある通り、次世代校務 DX を実現するためには、「今の環境でできる校務 DX」と「環境整備を伴う校務 DX」を両輪で並行して進める必要があります。明日から使えるTipsも必要ですし、環境整備をすればもっともっとできるDXもあります。

まず、今の環境でできる校務DXを見ていきましょう。

２－１．今の環境でできる校務 DX の実施

最初に「次世代校務 DX は従来業務の見直しや汎用クラウドツールの活用が前提」と書いてあります。

学校現場にお伺いすると、「このシステム使えないんだよ」という話をお聞きすることがあります。よーくお話を聞いていくと、「今のこのフローじゃこうなっているんだよ」ということがたくさんあります。学校は特に、ローカルルールが発展しているな、と感じることがあるのですが、A小学校とB小学校で承認の経路が違う、ということや、回覧についての取り決めが違うということがよくあります。それぞれに合わせることのできるシステムは、結局システム化の意義がほとんどありません。SAMRモデルでいうところの代替するだけで終わるので、それ以上の生産性は見込めないわけです。

システム化をきっかけに、従来業務の見直しを図る、ということが重要です。今までこうだったものを、少し変えてこうしたらいいんじゃないか、もっと大胆にこう変えてしまえばもっと楽になるのではないか、ということを考えるきっかけになると思います。

また、学校に特化した○○システムは、高額です。なぜなら学校に特化しているからです。あまり売れないのに高機能を備えなければならず、企業は開発費等投資の回収をするために高額にせざるを得ないのです。学校それぞれ独自の通知表が作れます、の価値をどれくらい見積もるか、ということですね。

ですので、汎用クラウドツールで何ができるか考える、ということは大事です。

ただ、これをどうにかしたい、ということは、機密に関わることも多いのが学校の現状です。簡単に何とかできそうなものはもうとっくにそうされているわけで、今残っている煩わしいものは、簡単に何とかならなかったものばかりです。発想を変えるか方法を変えるかしないといけないものですし、ガイドブックでは「「今の環境でできる校務 DX」は標準的な GIGA 環境を活用することを想定していますので、クラウド上で重要性の高い情報を取扱うことは出来ません。」とある通りです。

そのうちの、従来業務の見直しから見ていきましょう。

（１）従来業務の見直し

（不必要な業務等・帳票の見直し）

「慣習的に行われてきた業務を、時代の変化や技術の進展の視点から再点検し、業務の優先順位をつける中で必要性が低いものは思い切って廃止していくことが求められます。」とあります。「基本的には学校以外が担うべき業務」は思い切って取りやめないといけない段階ですね。

また、学校教育法施行規則第 28 条第１項で定められている帳票以外の帳票を作成し、（学校では表簿といいますが、ガイドブックの表記に倣います）その更新に四苦八苦しているのなら、すっぱりやめてしまうということも考えられますね。

ガイドブックに掲載されている抄ではこのようになっています。

学校教育法施行規則（昭和二十二年文部省令第十一号）（抄）
第二十八条学校において備えなければならない表簿は、概ね次のとおりとする。
一学校に関係のある法令
二学則、日課表、教科用図書配当表、学校医執務記録簿、学校歯科医執務記録簿、学校薬剤師執務記録簿及び学校日誌
三職員の名簿、履歴書、出勤簿並びに担任学級、担任の教科又は科目及び時間表
四指導要録、その写し及び抄本並びに出席簿及び健康診断に関する表簿
五入学者の選抜及び成績考査に関する表簿
六資産原簿、出納簿及び経費の予算決算についての帳簿並びに図書機械器具、標本、模型等の教具の目録
七往復文書処理簿

すっぱりやめたら大変なことになるんじゃ！！　と思われる内容かもしれませんが、特に児童生徒名簿などはマスターとなる帳票を定め（例えば校務支援システム上の名簿を常に正とする、と定め）そこから出力して使用する、というような運用に変える時期に来ているということではないでしょうか。

部活動リストを更新し、委員会リストを更新し、生徒会リストを更新する……どこかで必ず更新し忘れやミスが発生するので、マスター帳票のみを書き換えて、出力することに変えるという判断が必要です。

少し前まで、このようなご提案をすると「学校のことが何もわかっていない」「理由があるからこうなっているんだ」とお叱りを受けることもありました。

でも、そうやって大事に守ってきたものが、今の先生方のご苦労に繋がってしまっているのなら、もう考え直さなければならない時期です。今やっておかないと、今後ますます先生になりたい人が減ってしまいます。

今できる、と紹介されているものを今実施できていないのだとしたら、それを実施するにも大変な労力が必要になることだとは思います。ですが、ハイパーブレインはご一緒にそれを実施できるようご支援してまいりますので、ご検討だけでも始めていただければと思います。

来週は、具体的な取り組み内容の続きを見ていきます。