「個別最適な学び」はICTを使えば実現できるのか

 最近教育界で注目されているキーワードといえば「個別最適な学び」である。以前からある考え方ではあるが、GIGAスクール構想のキャッチフレーズである「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」の実現をもとに、現場で議論が活発になっている。さて、この「個別最適な学び」についてICTを使ってどのように実現できるのかについて述べていきたい。

「個別最適な学び」とは

 多様化している社会の中で、学び方も一斉授業のような画一的な学びではなく、それぞれの個に応じた学び方をしていくほうがよいのではないかという考え方である。習熟度も違えば、学びに向かう姿勢も本来はバラバラである。そこにある程度目をつぶって、同じペースで、同じ内容を一緒に学んできたのがいままでの一斉授業型といわれる学習方法である。

 けれどもその学び方にひずみがうまれつつある。もちろん様々な手立てを加えることで、教室の中で上手に学びを実現している先生もおられるが、これだけ多様化している中で、一斉授業型でそれを成し遂げるのはかなり至難の業になっている。そうではなく、書くのが苦手な子も、数の計算が得意でない子も、表現するのが好きではない子も、それぞれに応じた学びのスタイルを実現するための考え方が「個別最適な学び」である。

 今までも、もちろん個に応じた配慮はされてきた。けれども、一人の先生が30人の個性に応じて準備したり、対応したりするのは時間的・労力的に無理がある。だからこそICTを用いることで、いろいろな個性に応じて学びを実現する土壌ができたといえるのではないだろうか。

どのようにICTをつかって実現していくのか

 授業で感想交流をする時間をイメージしてほしい。道徳の資料を見た後や、国語の物語文を読んで気づいたことを意見交換するとき付箋に自分の考えを記入して、子どもたちの意見をグルーピング(同じような意見と違う意見をわけていく作業)をする。

 その際に、今まで自分の力で教科書が読み取れなかった子には、「読み上げ機能」と「イヤホン」を使い個別にタブレットに教材文を読み上げてもらう。教師も一度は全体で読み上げるが、後から見返したい場合などに有効な手段となる。字を書くことが苦手な子は「声で入力する」ことで、自分の意見を表明することができる。人前で発表することが苦手な子にとっても、みんなの前で声を出さなくても、考えていることを「タブレット内の付箋に書き、共有場所に貼る」ことで意見を出すことができる。つまり発達特性がある子たちにとってICTは心強いツールとなってくれるのだ。

タブレットをみている子ども画像

 

 先生側にもメリットがある。付箋を人数分準備したり、それを貼る台紙など準備したりする手間が大幅に減少する。発表する際も一人ずつ意見を言うと時間がかかっていたものが、付箋共有ツール(Google jamboardなど)を使うことで全員の意見が可視化される。まだ意見が出せてない子が誰なのかを把握することができたり、前もって意見がわかったりすることで徐々に授業を深めていくよう指名することもできる。  

 今回はあくまで一例だったが、このようにタブレットが一人一台あることで得られるメリットをフル活用していくことで「個別最適な学び」は今まで以上に実現しやすくなったとえるのではないか。ぜひこんな風に使ったら子どもたちが今まで以上に集中して取り組めたとか、この使い方はうまくいかなかったという事例をたくさんシェアしあうことで、子どもにとっても先生にとっても幸せな環境を生み出すことができるのではないか。大切なのは、今あるものを上手に使い、使い方をシェアし合うことでICTのメリットをみんなで享受することである。

 個別最適化は人ではとても難しいことをICT機器によって可能にしている。そのため、行政職の皆様には導入の際には、今までもそうだったように教員の意見等も反映し、できる限り子どもたちに寄り添ったものであるような設定や導入にしていただきたい。せっかくの機会、ご自分の自治体ににオールwinな状況が生まれることになる。

<参考文献> 蓑手章吾(2022) . 『個別最適な学びを実現するICTの使い方』 . 学陽書房 .

個別最適な学びを実現するICTの使い方 

個別最適な学びを実現するICTの使い方本の表紙

投稿者プロフィール

深見 太一
深見 太一
愛知県の公立小学校で13年、私立小学校で2年間教員経験
現在は愛知教育大学にて非常勤講師として教員養成に関わる。
クラス会議講師として小学校などで研修を行う。
北米心理学会認定のポジティブディシプリンクラスルームエデュケーターの資格をもっている。